2005 年12 月1 日
沖縄及び北方対策担当大臣・環境大臣 小池百合子 様
内閣府沖縄振興局長 藤岡文七 様
内閣府沖縄総合事務局開発建設部長 佐藤 浩孝 様
沖縄県土木建築部長 末吉哲 様
(財)日本自然保護協会 理事長 田畑 貞寿
(財)日本野鳥の会 会長 柳生博
(財)世界自然保護基金ジャパン 事務局長 日野 迪夫
中城湾港泡瀬地区埋立事業における浚渫工事等の一時中断を求める要請
現在,泡瀬地区では,海上工事が進みつつあり,沖縄総合事務局は,12 月から仮設桟橋周辺の浚渫および護岸内の埋立を行うとしています.
しかし,この浚渫と埋立は,泡瀬の干潟および浅海域の中で,生物多様性保全上,最も重要な場所を破壊することになり,改訂版「レッドデータおきなわ」に記載されている絶滅のおそれのある種や被度の高い海草群落が失われることになります.
このような工事の進め方は,環境影響評価書の沖縄県知事意見および事業者見解で示されている「環境保全措置」を軽んじるものです.そのため,私たちは,下記の理由により,12 月予定の工事を一時中断し,早急に環境監視委員会,環境保全・創造委員会を開催し,絶滅のおそれのある種や海草藻場に関する追加調査を行い,その結果を十分に検討し,必要な保全措置を実行することを強く要請します.
記
1. 改訂版「レッドデータおきなわ」に新たに記載された種の追加調査と保全対策が必要
泡瀬干潟の研究者らによると,2005 年9 月に沖縄県自然保護課が公表した「改訂・沖縄県の絶滅のおそれのある野生生物(動物編)」(レッドデータおきなわ)に記載されている海洋生物(甲殻類,貝類,魚類)のなかで,121 種が泡瀬干潟および周辺の浅海域に分布するとされています.その内訳は,絶滅危惧TA 類7 種,同TB 類14 種,同U類26 種,準絶滅危惧60 種,情報不足13 種,地域個体群1 種です.
今回の改訂で新たに絶滅のおそれのある種が追加されたことから,これまで貴重種,重要種とされなかった種についても,認識を新たにし,必要な保全対策を取る必要があります.改訂版「レッドデータおきなわ」に記載された種については,2000 年の環境影響評価書の沖縄県知事意見および事業者見解にもとづき,工事を一時中断し,関係する委員会を開催して検討し,必要な保全対策をとるべきです.
沖縄県知事意見:工事中に貴重な動植物が確認された際は,関係機関に報告するとともに,適切な措置を講じること
事業者見解:工事中に天然記念物指定種やレッドデータブック,レッドリスト等の記載種,その他貴重種・重要種に相当する種で,環境影響評価書に記載されている動植物種以外の種の存在が埋立に関する工事の施工区域内若しくはその近傍で確認された場合には,関係機関へ報告するとともに十分調整を図り,その保全に必要な措置を適切に講じます.
2. 海草移植結果の適正な評価が必要
埋立で失われる海草藻場は移植によって代償し,移植実験を行い生息・生育を確認してから,実際に移植することになっています.移植結果は「移植時と比較して海草の生育被度が高くなっており,藻場に多くの生物が出現している」か否かによって評価されます.
実験および移植は1998 年から始められていますが,その成否に関しては,事業者と環境団体では,多くの場合,評価が分かれました.しかし,手植え移植が可能であるとの根拠になった実験区(特にSt.U,1998 年7 月〜)では,現時点で海草藻場が壊滅しています.
これは,移植がうまくいかなかったことを示していると考えられます.
一方,2005 年8 月に事業者の「海藻草類専門部会」が開かれ,そこでの海草移植の評価の主旨は「短期的には生態系が維持されているが長期的にはモニタリングが重要である」とのことでした.しかし,手植え移植が終了したのは2003 年1 月であり,この評価は移植後2 年半が経過した時点での評価であることから,移植の成否について判断するには,まだ十分な時間が経過していないと見るのが妥当と考えられます.
海草移植の評価に関しては,少なくとも5 年以上の継続調査が必要です.海草移植の成否を将来に先送りしたまま工事を急いで,浚渫・埋立に着工するべきではなく,工事を一時中断し,適正な検討と評価を行うべきです.
県知事意見:海草の移植については,移植先で海草の生息・生育が可能であることを確認した上で行うこと.
事業者見解:平成10 年7 月から移植予定地内の3 か所にて,リュウキュウアマモとボウバアマモの移植調査を実施しており,平成11 年度の調査結果から移植先で海草の生息・生育が可能であることを確認しております.また,他種の主な海草についても今後移植調査を行い,生息・生育が可能であることを確認した上で移植を行うことと致します.
海藻草類専門部会評価:短期的に見れば,被度においては一旦減少した後増加するまでにはいたっていないが自然藻場の変動の範囲内であること,藻場の面積,生物生息状況においては概ね良好な結果が得られており,移植海草の再生産は図られ,生物生息環境も進展していると判断されることから,藻場生態系が維持されている.長期的にみれば,大型海草群落は遷移の途中と見られ,今後もモニタリングを継続していくことが重要である.
以上
この件に関する問い合わせ先
(財)世界自然保護基金ジャパン 花輪伸一
(財)日本自然保護協会 開発法子
(財)日本野鳥の会 高井健慈