2007年4月6日
沖縄総合事務局 局長 竹林義久 様
開発建設部長 様
那覇港湾・空港整備事務所長 三宅光一 様
港湾空港指導官 成瀬英治 様
港湾計画課長 阿野貴史 様
沖縄県知事 仲井真弘多 様
港湾課長様
環境政策課長様
自然保護課長様
泡瀬干潟を守る連絡会
共同代表 小橋川共男 漆谷克秀
連絡先:前川盛治(泡瀬干潟を守る連絡会
事務局長)090-5476-6628
泡瀬で貝の新種・ザンノナミダが発見された。泡瀬埋立事業の中止を再度訴える(要請)。
2月に発行された日本貝類学会誌、Venus 65(4)で、二枚貝のニッコウガイ科の新種・ザンノナ
ミダ(Semelangulus lacrimadugongi)が、沖縄市泡瀬を模式産地として記載された (Kato &
Osuga, 2007)。発見・記載者は、加藤真氏・大須賀健氏である。Venus 65(4)、ザンノナミダの写
真は別紙コピーを参考にして下さい。
この貝の特徴、発見の状況、生息状況、及び学術的な意義は次のとおりである。
1.沖縄本島および加計呂麻島の海草藻場に棲息する二枚貝の未記載種が見つかったので、
学名をSemelangulus lacrimadugongi、 和名を「ザンノナミダ」として記載する。
2.本新種の貝殻は小型、最大で殻長7.2ミリ、著しく扁平、左右非対称で殻表に間隔のある同
心円状の成長輪脈が発達する。
3.模式標本(Holotype)は、採集した標本中の最大の個体(泡瀬産)を指定した。よって模式産
地は泡瀬干潟である。
4.学名の lacrimadugongi とは、lacrima(=tear, 涙) と dugong(ジュゴン)を合わせた名で、貝殻
の形が扇形で落涙に似ていることと、 ジュゴンが生活する藻場が保全されることを願って命名し
た。なお、和名「ザンノナミダ」の「ザン」は言うまでもなく沖縄でのジュゴンの呼称である。
5.現在までにこの種が確認されたのは沖縄本島の泡瀬および辺野古、加計呂麻島の渡連(ど
れん)および実久(さねく)のみである。これらの産地のウミヒルモ場の細砂中に限って棲息して
いる。貝殻や軟体部の特徴から、この種はウミヒルモの繁茂する細砂中で横たわって棲息してい
るものと考察されるが、詳細な生態や、なぜウミヒルモ場にのみ棲息するかについては今後の検
討課題である。尚、辺野古は現在確実にジュゴンが生息する国内唯一の場所であるほか、泡瀬
や加計呂麻島は近年までジュゴンが生息していたところである。
6.ジュゴンの生息する海草藻場の独特な生物多様性、そして今回の新種の存在を考えるとき、
沖縄や加計呂麻島の海草藻場の生態系を保全することの重要性は明らかである。
これで、泡瀬を模式産地として新種記載された海洋生物は、ヒメメナガオサガニ,ホソウミヒル
モに続いて、昨年以来3種目となる。
中城湾・泡瀬干潟・海域が、学術的に極めて価値の高いところであり、厳正に保全されるべき
地域であることが、益々明らかになった。
しかし今、この貴重な泡瀬干潟・海域が、中城湾港(泡瀬地区)公有水面埋立事業によって埋
立てられ、浚渫されている。
生物の新種が続々と見つかり、複数の種が模式産地に指定されている場所を、開発(埋立)
によって破壊している例は国際的に殆どない(と言うか先進国では、前例がないかも知れな
い)。小笠原の兄島も、多数の陸貝(カタツムリ)の新種が見つかったことによって、空港建設が
回避された。このまま、泡瀬の埋立を続けるならば、日本国内閣府・沖縄県・沖縄市は,環境行
政上・科学史上の世界的歴史的汚点を残すことになる。
私たちを含め、多くの海洋学者がこれまで泡瀬干潟・海域で発見され、生息している多くの新
種・貴重種(ニライカナイゴウナ、ユンタクシジミ、オサガニヤドリガイ、ヒメメナガオサガニ、トウカイタママキ、フジイロハマ
グリ、ジャングサマテガイ、アワセカニダマシマメアゲマキ、ホソウミヒルモ、ヒメウミヒルモ、リュウキュウズタ、カラクサモク、ミル属
の1種、ウミウチワ属の1種、ウミエラ等)の保全と埋立中止を訴えてきたが、事業者は、「埋立区域外
の保全につとめる」として、事業を強行している。埋立区域内外を含め、泡瀬干潟・海域、中城
湾全体が厳正に保全されるべき地域であり、工事の進行により、中城湾全体が破壊されることを
止めさせなければならない。
私たちは、あらためて次の事を要請する。
1.事業者はアセス書で約束した事(下記参考)を履行せよ。
2.埋立区域内外を含め、泡瀬干潟・海域、中城湾全体を厳正に保全せよ。
3.泡瀬干潟・海域のウミヒルモ類の海草藻場を保全せよ。
4.泡瀬埋立事業を中止せよ。
5.ザンノナミダは局所的にごく僅かしか棲息していない。種の確認については、発見者に問い
合わせ、海草藻場を掘りまわすなど、生息域を攪乱・破壊するような調査をしないこと。
参考 アセス書での新種・貴重種の保全の約束
知事意見:工事中に貴重な動植物が確認された際は、関係機関に報告するとともに、適切な措
置を講じること。
事業者見解:工事中に天然記念物指定種や「レッドデータブック」、「レッドリスト」等の掲載種、
その他貴重種・重要種に相当する種で、環境影響評価書に記載されている動植物種
以外の種の存在が埋立てに関する工事の施工区域内若しくはその近傍で確認された
場合には、関係機関へ報告するとともに十分調整を図り、その保全に必要な措置を適
切に講じます。
注意:「工事の施工区域若しくはその近傍で確認された場合には、その保全に必要な措置を適
切に講じます。」とある。
新種・ザンノナミダの詳細については、下記発見者に問い合せてください。
加藤真: 606-8501 京都市左京区吉田二本松町 京都大学大学院 人間・環境学研究科
Tel: 075-753-6849; Fax: 753-6722
大須賀健:京都市左京区高野玉岡町1−108 TEL 075-722-1783