泡瀬干潟生物多様性研究会、山下博由氏のHPより転載 http://diary.jp.aol.com/59ae5t97vxr/

ザンノナミダ  


今月,発行された日本貝類学会誌,Venus 65(4)で,二枚貝のニッコウガイ科の新種・ザンノナミダ(Semelangulus lacrimadugongi)が,沖縄市泡瀬を模式産地として記載された (Kato & Osuga, 2007).
ザンとは沖縄語でジュゴンのことである.学名のlacrimaはtear(涙)で,dugongはジュゴン.学名のEtymology(語源)には,「ジュゴンが泳ぐ絶滅の危機に瀕する海草藻場が保全されることへの希望を象徴して」と記されている.沖縄の自然破壊の現状を知る者なら,誰もがこの貝の形と名前に涙を流すだろう.
これで,泡瀬を模式産地として新種記載された海洋生物は,ヒメメナガオサガニ,ホソウミヒルモに続いて,昨年以来,3種目となる.
これらの新種記載論文は,海洋生物学者の泡瀬干潟への保全への願いをこめた,「はかなく」そして過激な抗議であると,私は思う.
生物の新種が続々と見つかり,複数の種が模式産地に指定されている場所を,開発によって破壊している例は国際的に殆どない(と言うか先進国では,前例がないかも知れない).小笠原の兄島も,多数の陸貝(カタツムリ)の新種が見つかったことによって,空港建設が回避された.
このまま,泡瀬の埋立を続けるならば,日本国内閣府は,環境行政上・科学史上の世界的歴史的汚点を残すことになるだろう.
この小さな貝の生命の価値を,あなたたちは理解できるだろうか? あなたたちの無知や無理解による地球の破壊は,確実な負債として,無差別に未来の人々に残されるのだ.