泡瀬干潟埋立の問題点(概略)  

 泡瀬干潟を守る連絡会 2007年820

    

1.                      埋立事業に合理性がないこと。

 

(1)土地利用計画があまりにも杜撰であり、将来性がない。埋立が実現していないのに、

はやくも「土地利用計画の変更」が検討されていること。

@        リゾート地構想(大きな4つのホテル、コンドミニアム、コテージ)でありながら、立地が

確実なホテルがないこと(沖縄市アンケート結果、2000年実施)。土建業者1社、確実ではな

いが希望のホテルが1社。

A        計画されている住宅用地(26ha)はホテル従業員の住宅として計画されているものであり、

ホテルの立地が無ければ、住宅建設もない。

B        構想されている、栽培漁業センター、海洋研究所は出来ないこと。

C        客船埠頭が計画されているが、将来性が無く、赤字が予想されること。

台湾―沖縄(那覇、平良、石垣)航路のスタークルーズも運休になり、ホテルも出来ないことから、

客船埠頭は大きな釣堀になるおそれがある。 

D        マリーナ構想があるが、沖縄マリーナと競合し、また将来性がないこと。

E        人工ビーチが計画されているが、周辺は深い海(水深約6m)であり、砂の流出などがあり、

維持管理が大変である。沖縄市の財政負担になること。

F        沖縄市が購入する90haの内3分の131haが米軍用地(沖縄市との共同使用地)であ

り、規制が厳しく、広場としての活用しか出来ないこと。

G        当初計画が実現できないのであれば、原点に立ち返り、市民に情報を提供し、市民合意を得

るための行政手続を行うべきである。小手先で「みなとまちづくり検討委員会」をたちあげ、

その答申で土地利用計画変更を行うことは、行政手法として間違っている。世界に誇る貴重な

干潟・海域、観光・エコツーリズムに活用できる貴重な場所を埋め立てるに値するのか、もう一度考

え直すべきである。

H        若者の雇用拡大を実現する、といっていますが、以上の問題点を考えれば、その実現は困難

である。現在工事が行われているが、工事の主体は本土ゼネコンであり、地元企業はほとんど

が下請けである。また、04年度、5年度の工事で、沖縄市の土建業者(対象業者421社)の受

注はわずか3社(042社、051社)であり、地域活性化、雇用拡大にもなっていない。

沖縄県発注の工事に対する入札状況は次の通り

泡瀬埋立事業、沖縄県発注工事、落札状況  平成13年3月29日〜平成18年2月17日まで 合計30件

 

 

 

 

 

 

 

 

 

落札業者地域別

件数(合計)

落札業者(回数)

東京都

10

三菱総合研究所(2)、港湾空間高度化センター(4)、国土環境(3)、エコーJV(1)

浦添市

9

イーエーシー5)、岩芝エンジニアリング(3)、大冨建設(1)

那覇市

3

丸元建設(1)、経済調査会(2)

うるま市

5

グロリア(1)、環境保全研究所(4)

沖縄市

3

安村組(1)、大進建設(1)、大城水道(1)

 

 

 

落札額(合計、単位万円、万以下切捨て)

三菱総合研究所

1,721

丸元建設

6,795

港湾空間高度化センター

7,169

経済調査会

31

国土環境

6,058

グロリア

3,370

エコーJV

3,937

環境保全研究所

6,666

イーエーシー

4,682

安村組

7,297

岩芝エンジニアリンク

2,467

大進建設

3,202

大冨建設

220

大城水道

141

 

国(総合事務局)発注の工事(工事開始から平成18年度工事まで)も、ほとんどが、本土大手ゼネコン、

県内大手土建業者であり、全体で約146件の工事の発注があるが、沖縄市の土建業者の入札はゼロである。

 

注意※ 中城湾港漁場監視調査業務として沖縄市漁業協同組合に支払われた金はある。平成13330万、

平成14540万、平成15510万、平成16520万、平成17616万、平成18326万、合計2,872万円である。

この「漁場監視調査業務」も調査が必要である。工事区域の漁業権を放棄して、漁業補償金を20億円もらっているのに、

「漁場監視調査業務」として、毎年2回(4月と11月)支払われているのは不思議である。この金は佐敷中城漁業協同組合

にもほぼ同じ金額が支払われている。

 

(2)新港地区の浚渫土砂処分については、緊急性・合理性が無く、また、代替措置も検討さ

れていないこと。

埋立事業の目的の一つである隣接する新港地区のFTZ構想に基づく港・航路の浚渫につい

ては、緊急性・合理性がなく、当初92社の企業誘致にたいして、用地を取得した企業は現在わずか3(06年12月では、6社)

ありほとんどは県建設のテナント工場入社である。そのテナント工場も、色々の優遇措置、賃貸料の軽減をしたにもかかわらず、

空きが多い0612月では空きは4つ)。いま、新港地区には西埠頭があるが、FTZ用地に立地する企業で、西埠頭を利用している

企業はない。そのような状況なのに、東埠頭・新港(5万トン級の大型船、水深12m)をつくる事(泊地・航路の浚渫)に

緊急性・合理性がないこと。そして、泥質で質が悪くて新港地区の埋立に使えなかった浚渫土砂を「浚渫土砂処分として泡瀬埋立に使う」ことに大きな問題点がある。

事業者は、新港地区の泊地、航路の浚渫土砂は埋立にほとんど使い、余った浚渫土砂を泡瀬埋立に使うとしているが、泡瀬埋立に

930万立方メートル(8ルーベを積む10tトラック、約116万台分)の土砂が必要であり、そのうち710万立方メートルを新港

地区の浚渫土砂を使うとしている。そして約3km、海底にパイプを埋設して運び、泡瀬埋立に使う。このような莫大な量が新港地区

で何故余ったのか、説明がない。浚渫土砂は質が悪く、新港地区の埋立に使えなくなり、余ったと思われる。新港地区で使えなかった

浚渫土砂が、何故泡瀬埋立では使えるのか?この疑問に事業者は何も答えていない。

また、FTZの為に、新港地区の港の整備が本当に必要ならば、浚渫土砂の処分の「代替案」を検討すべきである。

また、新港地区が遊休化していることから、この場所が、辺野古新基地建設の方法書で、

作業ヤード(ケーソン製造場所)としてあげられていた経緯もある。国(防衛施設庁)が遊休

化していることを認めている。

現在、新港地区の埋立地のFTZ用地の分譲状況は次の通りである。

(平成1812月現在、沖縄県企業立地推進課の資料より作成)

 

分譲対象面積

分譲済面積

分譲率

分譲残面積

2次埋立

55.3ha

14.4ha

26.0

40.9ha

3次埋立

34.1ha

34.1ha

実質

89.4ha

14.4ha

1.9ha

16.1

2.1%

75ha

87.5ha

賃貸工場入社も分譲済面積に入れているので、実際の分譲面積(率)は、さらに下がる。

賃貸工場、分譲地での賃貸を除くと、実質FTZ用地の分譲率は僅か、2.1%である。

 

07315日の「沖縄タイムス」報道によれば、沖縄県は、分譲地の分譲価格を30%〜50%割引

する方針を明らかにしている。報道の概要は次の通り。

@        52aの分譲面積に対して、現在の分譲率は3.6%である。

A        現在は1u当たり26,700円であるが、次のように割り引く 

B 割引額は是正期間4年間で約47億円となる。

 

●用地取得面積が5千u以上2万u未満は30%割引の18,690円(1u当たり)

●用地取得面積が2万u以上6万u未満は40%割引の16,020円(1u当たり)

●用地取得面積が6万u以上は、50%割引の13,350円(1u当たり)

 

※企業誘致(FTZ構想)が失敗し、新たに企業誘致のため県税が投入(47億円)される

ことになる。

●賃貸工場の賃貸料も年1440万円でしたが、3年間割引され900万円になり、そのための県税投入は

満床ベースで年間1700万円、3年間で32100万円となります。

 

(3)新たな米軍用地の提供になる。共同使用地に問題。市民負担でもある。

当初、埋立計画は、泡瀬通信施設の制限水域(鉄塔から500m範囲)を解除して進めること

になっていたが、仲宗根市長になってから、変更され、埋立後は制限水域(陸になっている)

の面積約31aは米軍管理(米軍基地)になり、米軍との協定で、共同使用地になる。

使用制限がある(10m以上の建物禁止、幹線道路禁止、電波障害禁止、石油・ガソリン貯蔵禁止)。

違反物は設置者の責任で即時撤去、条件守られないときは協定書破棄、米軍専用地になる。

このことは、米軍基地を市民・県民の税金を使って建設し、米軍に提供する(共同使用する)

ことを意味する。また、共同使用地であるため、軍用地料も10分の1しか入らず、市民負担

である。

沖縄市は米軍基地に36%取られているので、新たな事業をするためには、海を埋立てるし

かないといっているが、これも問題である。新川市長のとき、自衛隊知花サイトが使用期限

になるので、返還を求めることになっていたが、仲宗根市長に代わったとたん、自衛隊に20

年使用させる契約をしてしまった。また最近、旧東恩納弾薬庫跡(全体110ha、沖縄市有地

67ha)が返還されることになっているが、そこを自衛隊のライフル射撃場として提供し

ようとしている。また、泡瀬ゴルフ場も返還され、その跡地に沖縄市有地もあり、これから

活用が検討される。

また、泡瀬通信施設は返還が合意されていたが、地主(泡瀬復興期成会や泡瀬プライドの

人たちも含む)が返還に反対し、そのため、海の埋立が進行した経緯もある。

現在、軍用地は返還される状況にあり、その跡利用が検討されなければならない状況にあ

る。将来性の無い、そして市民に負担を強いる東部海浜開発(泡瀬埋立)に力を入れるより、

返還地の跡利用を含め、沖縄市全体の活性化のための街づくりに力を注ぐべきである。

 

2.沖縄市民に将来過重な財政負担を与えることが、想定されること。

埋立事業の目的の一つの海洋リゾート地計画があまりにも杜撰であり、沖縄県包括外部監

査人も「事業内容の抜本的な変更や見直しも必要」と報告していること。報告概要は次の

通り

        海洋性レクレーション拠点、国際交流リゾート拠点形成の根拠が明確でなく、需要予測が甘い。

        事業計画も抽象的

        491億円投入すべきかどうか検討が必要

        事業内容の抜本的な変更や見直しも必要

        キャッシュフロー計算書からみても明白なように事業費の財源として約13億円余の起債を行っ

ており、今後の処分状況如何によっては新港地区、あるいは西原・与那原マリンタウンと同

様の厳しい財務状況に向かう可能性は十分想定される。

 

3.泡瀬干潟・海域の大切さが理解されていないこと。世界に誇る貴重な場所であること。

 

(1).同海域は「沖縄県自然環境の保全に関する指針(19982月)」で評価ランク1(厳正

な保護を図る区域)に指定されている、極めて貴重な干潟・海域である。

(2).埋立の認可・承認後も、アセス書に記載されていない新種・貴重種が多数発見・確認さ

れていること。そして、それらの種の保全が極めて不十分なこと。

 

埋立認可後確認された新種・貴重種・絶滅危惧種など

植物(12種)

ホソウミヒルモ(新種認定2004年)、ヒメウミヒルモ(新産)、ウミヒルモ(新産)、オオウミヒルモ(新産、新称)、リュウキュウズタ(新種)、

カラクサモク(新産)、ミル属の1(新種)、ウミウチワ属の3種(新産種が3つの可能性・神戸大学の専門家)

カワツルモ(陸淡水、絶滅危惧種)、ホソエガサ(絶滅危惧種1類)、深場のコアマモ

動物(18種)

ニライカナイゴウナ(新種可能性)、オサガニヤドリガイ、ヒメメナガオサガニ新種認定2006年)、スイショウガイ、フイリピンハナビラガイ、

ユンタクシジミ(新種認定2006年)、カゲロウヨフバイオキナワハナムシロヤマホトトギスコバコガイオボロヅキオキナワヤワラガニヤマトウシオグモ

アワセカニダマシマメアゲマキ(仮称、新種可能性)、ルリマダラシオマネキリュウキュウキッカサンゴスギノキミドリイシヒメマツミドリイシ

最近(07228)確認された貝の新種・ザンノナミダ

 

(3)     2005年、改定発行された「レッドデータおきなわ」に泡瀬干潟・海域に生息している海

洋生物(甲殻類7種、貝類108種、魚類6種)が121種も絶滅危惧種(TA類、TB類、U類、

準絶滅危惧種、情報不足種)として記載されていること。そして、それらの絶滅危惧種の保全

がなされていないこと。工事進行により、それらの種が「絶滅」に追い込まれる可能性が高い

こと。

絶滅のおそれがあるもの(埋め立て予定地、浚渫場所及びその周辺に生息している貝など)(23

種)

ジャングサマテガイ、トウカイタママキ、ニライカナイゴウナ、オサガニヤドリガイ、シラオガイ、フジイロハマグリ、サンゴガキ、マダライオ

ウハマグリ、カゴガイ、ヒメオリイレムシロ、ヒラセザクラ、ウスカガミ、オハグロガイ、ソメワケグリサザナミマクラ、オキナワヒシガイ、エマイ

ボタン、ミガキヒメザラ、トゲウネガイ、ゴイシザラ、ヒメツメタガイ沖縄型、チリメンカノコアサリ、フキアゲアサリ、ウミエラ(サン

ゴの仲間)

 

事業者が埋め立て予定地のみで生息確認されているとしている貝(6種類)

→ネコガイ、ヒメオリイレムシロ、ツヤイモ、ウミギク、ウネイチョウシラトリ、オウギキノコアサリ

17ネコガイ(U類)

18ヒメオリイレムシロ(U類)

19ツヤイモ(準)

20ウミギク(準)

21ウネイチョウシラトリ(情報不足)

22オウギキノコアサリ(情報不足)

 

        アセス書には貝類の記載は僅か23種であり、絶滅危惧種は僅か1つ(イボウミニナ)しか記載

されていない。

泡瀬干潟・海域には約320種の貝が生息しており、そのうち108種が絶滅危惧種であること

が明らかになった。アセス書の杜撰さが明らかになっている。

 

新種・貴重種が発見されたときの対応は次の通りですが、その約束が守られておりません。

 

知事意見:工事中に貴重な動植物が確認された際は、関係機関に報告するとともに、適切な措

置を講じること。

 

事業者見解:工事中に天然記念物指定種や「レッドデータブック」、「レッドリスト」等の掲載

種、その他貴重種・重要種に相当する種で、環境影響評価書に記載されている動植物種以外の

種の存在が埋立てに関する工事の施工区域内若しくはその近傍で確認された場合には、関係機

関へ報告するとともに十分調整を図り、その保全に必要な措置を適切に講じます。

 

(4)     最近の調査で、第T期工事区域内に貴重なサンゴ(スギノキミドリイシ、リュウキュウキッカサンゴ、ヤッコアミメ

サンゴ、ホソエダミドリイシ等が871u)が生息し、また航路として浚渫される場所(西防波堤北西)

29,360uの貴重なヒメマツミドリイシ群落があることが明らかになっている(これらはアセス書に記載

されていない。)。航路浚渫、埋立で貴重なサンゴが消滅する。

 200768日、ヒメマツミドリイシ群落で、泡瀬干潟で初めてサンゴの産卵が確認され、

中城湾港全体のサンゴの卵の供給源であることが明らかになった。

 

 

(5)泡瀬干潟は、野鳥・渡り鳥の宝庫です。

泡瀬干潟は沖縄で残された干潟で、最大であり、ラムサール条約登録湿地の漫湖(1999年登録)

より、シギ、チドリ類の渡り鳥の飛来が多い。特にムナグロは全国の53%が泡瀬干潟で越冬している。

泡瀬干潟で確認された種は約165種、主なものでも92種(沖縄野鳥の会)ですが、事業者は

これまで68種(平成12年〜14年まとめ)しか確認していません。

貴重種も多数飛来・生息します。次はほんの一例です(カテゴリーは環境省RDB)。

クロツラヘラサギ(1A) サンカノゴイ(1B) セイタカシギ(1B) ハヤブサ(U類) アカアシシギ(U類) ホ

ウロクシギ(U類) コアジサシ(U類) ズグロカモメ(U類) オオタカ(種の保存法、国内)  ヘラシギ

054月、泡瀬干潟で20年ぶりに撮影)

 次は泡瀬干潟に飛来・生息する希少種(環境省、県)です。

リュウキュウヨシゴイ、チュウサギ、カラシラサギ、ミサゴ、リュウキュウヒクイナ、オオバン、シロチドリ、オオジシギ、ベニアジサシ、

エリグロアジサシ、カワセミ、リュウキュウサンショウクイ、アカモズ

 

(6)出島方式で環境は保全されるといっていますが、残された干潟・自然環境は悪化します。

干潟では、工事が始まって貝やタコが取れなくなっています。クビレミドロも減少しています。

★隣の新港地区も出島方式の埋立ですが、残った干潟環境が悪化しました。

@        2000羽の野鳥が来る楽園でしたが、今は塩漬けの土地になり、野鳥もほとんど来ません。

野鳥の飛来約20分の1に激減した。

A        佐敷干潟に次ぐトカゲハゼの生息地でしたが、毎年600匹の稚魚を放流しなければ維持できませ

ん。オキシジミ(貝)も豊富でしたが、今は採れません。

        福岡県の和白干潟でも出島方式の埋立がありましたが、野鳥が激減、干潟のアオサの異常発生・

貝の大量死などが起こっています。

★出島方式は「水路内の滞留負荷の増大や周辺海域への汚濁負荷の流出が懸念されるため」良策

ではない(浦添埋立、環境影響評価方法書)、とされています。

 

(7)アセス書ではクビレミドロ(絶滅危惧TA類)について「移植試験を実施した結果、技術的にも移植する

ことが可能であると判断される」と記載されているが、その移植試験とは、クビレミドロを屋慶名に移して1月程度、

経過を観察しただけであり、その結果から「移植可能」と判断したことになる。これは子供だまし、科学を冒涜する

ものであり、アセスの杜撰さを示すものである。クビレミドロの移植実験は現在も続いており「人工干潟への移植技術」は、

現時点でも確立されていない。

 

4.埋立の前提である大型海草藻場の移植技術が現時点で確立されていないのに、工事を行っ

ていること。アセス書では、海草の生息・生育が可能であることを確認したうえで行う(県知

事意見・事業者見解)、となっている。

2006222日、環境省は、参議院環境委員会で岡崎トミ子氏の質問に対し、「海草移植は

日本では確立されていない」と回答している。これまで事業者は、機械移植実験で6290個(9435

u)、減耗対策実験で150個(225u)、手植え移植で115uの移植海草ブロック(海草藻場)

を破壊してきたことになる。

 

また、海草の移植を検討するために事業者が設置した「海藻草類専門部会」の座長(責任者)を務める野呂忠秀

鹿児島大学水産学部教授は、「海草移植で海草藻場の保全は出来ない」と、事業者が設置した「環境保全・創造検討委員会」

の中で発言している。(2007314日、沖縄タイムス、琉球新報記事)

 

また、アセス書で約束していた埋め立て予定地の25aの大型海草藻場の移植が、被度が50%以下になったので

移植対象外として、そのまま埋立てられる可能性が極めて高い(これまで、わずか1haの海草藻場が実験・手植え移植

に使われただけである。残り24haは保全されないまま、そのまま生埋めにされる)。

また、被度の調査では国(事業者)の評価方法は10m枠で行う(普通はTm枠)など、多く

の問題点がある(この件に関しては、アセス書違反の可能性がある。アセス書には被度調査を10m枠で行うとの記述が無い)。

200410月の被度合同調査でも、同じ場所(埋立予定地)で、国は43.4%、泡瀬干潟を守る連絡会で56.6%と発表する

など、事業者の評価の問題点も明らかになった。

 

5.              この埋立事業に対して、沖縄市民・県民の合意形成がなされていないこと。様々な世論

調査では、埋立反対が過半数を超えていること。

 

各種世論調査結果            

 

1.沖縄環境ネットワークの世論調査(琉大教授 鈴木規之)   実施  2001年3月29日〜4月14日 発表 

4月24日。  選挙人名簿による層化無作為抽出法で抽出した2919人に郵送  回答者 609人  回収率20.9%

 

      埋立必要と思う    60人(10%)

   埋立必要と思わない  412人(68%) 

      分からない      134人(22%)

 

2.沖縄タイムス、朝日新聞、琉球朝日放送。  実施01年11月17、18日 発表11月20日  沖縄市選挙人名簿

から無作為2段抽出法で1000人を選び、電話番号の判明した716人に実施し、478名から回答を得た。

電話番号判明者に対する有効回答率は67%。総数に対する有効回答率は48%

                                                                          

      埋立賛成     24%        市民投票実施すべきだ    68%           

      埋立反対     57%      実施する必要はない     18%        

      その他、無回答    19%       その他・無回答          14%       

 

3.市民意識調査実行委員会(漆谷克秀実行委員長)。実施02414日 発表 414  回答者 1221

 

 埋立賛成  343(28.09%)                                                     

  埋立反対  566人(46.36%)    推進署名に署名した人     295人(24.16%)

  無回答   312人(25.55%)    推進署名に署名しなかった人   739人(60.52%)

                                     

   仲宗根正和氏に投票した人 588人(48%)

                    埋立賛成   322人(54.76%)

                   埋立反対   77人(13%) 

                    解答無し     189人(32%)

   桑江テル子氏に投票した人  544人(45%)

         埋立賛成    8人(1.47%)

                   反対     442人(81.25%)

                   回答無し    94人(17.28%)

   投票した人の回答無し     89人(7.3%)

          埋立賛成    13人(14.61%)

          埋立反対    47人(52.81%)

          無回答  29人(32.58%)

4.琉球新報、沖縄テレビ 世論調査 02.11.12(知事選挙前)

     埋立賛成 16%  

             雇用創出、経済発展につながるから 83.1%

       開発用地が海側にしかないから     6.9%

   埋立反対38.6%

            自然破壊につながるから  76.1%

            計画不十分で雇用創出、経済発展につながらないから 15.6%

            市街地の活性化を優先すべき 5.4%

     住民投票で判断すべき 23.6%

     分からない 21.6%

 

     連絡会コメント 埋立反対と住民投票で判断すべきを合わせると 62.2%

 

5.京都大学アンケート結果  2004年1月発表(実施2003年10月)

 

かなり賛成  7.2%

どちらでもない5.5%

少し反対 10.8%

無記入15名あり

賛成16.3%

 

反対27.7%

 

少し賛成  6.4%

 

かなり反対 26.0%

 

賛成合計  29.9%

 

反対合計 64.5%

 

 

6.              国内外の多くの団体、学会等から埋立中止の要請がだされていること。

泡瀬干潟・海域は渡り鳥の中継地であり、ラムサール条約事務局長ブラスコ氏、ロバー

ト・ヒル元オーストラリア環境遺産大臣、世界106カ国の鳥類保護NGOが加盟しているバー

ドライフ・インターナショナル、オーストラリア・アジア・シギ・チドリ研究グループから埋

立中止の要請がある。また貝類の専門家コーセル博士(フランス国立自然史博物館)などの諸

外国や、また国内でも、日弁連、日本ベントス学会、日本蜘蛛類学会、沖縄生物学会、沖縄弁

護士会、日本自然保護協会、日本野鳥の会、WWFJ等からも中止・保全・見直し等の要請があ

ること。

 

7.                泡瀬干潟の埋立は沖縄市の強い要請に基づき、沖縄市・沖縄県の要請で行われてきた。

しかし、その事情が変化し、沖縄市は今後の対応の検討を始めた。

@        064月の沖縄市長選挙で、「埋立積極推進」の候補者が破れ、「検討委員会を立ち上げ検討する」

A        を公約した東門美津子市長が誕生した。

B        埋立事業を推進してきた沖縄市の主幹課「東部海浜開発局」が現在業務の大半を停止しており、

埋立に関する予算も「凍結」されている。

C        泡瀬干潟埋立公金差止め訴訟の沖縄市の準備書面で、「沖縄市が埋立地を購入する、インフラ整備を

する、公金を支出するということ」が「確実性をもって予想されるというものではない」と述べている。

 

沖縄市は、今「東部海浜開発検討会議」を立ち上げ、事業継続の有無を検討することにしている。

事業者(総合事務局、沖縄県)は、沖縄市の対応を注目し、当面「埋立事業を中断」すべきである。

最近になって、沖縄県は新港地区の土地利用計画の見直し、泡瀬埋立ての規模検討を言い出し始めている

20061110日「琉球新報」記事、沖縄県総務部長発言)。

沖縄市の検討会議は07728日に最終回になり、沖縄市長への報告書をまとめ、731日に市長に報告書

を提出した。委員は10名(専門委員6名、市民委員4名)であるが、全員、今のままの計画では沖縄市の活性化

にはならないと意見を述べ、二人は工事の中断を事業者(国・県)に要請すべきであると報告している。また、

今後の課題として、市民合意を得る努力をすべきこと、円卓会議の開催、新たな委員会の設立を要請している。

(詳細は沖縄市のHPで見ることが出来る。)

この報告書をもとに、埋立事業の今後の是非を東門沖縄市長が判断することになっているが、

私たち、泡瀬干潟を守る連絡会は、東門市長に「中止」の判断をするように、今後運動を強めることにしている。