平成19年1月17日

平成17年(行ウ)第7・8号 泡瀬干潟埋立公金支出差止等請求事件

原告 小橋川共男 外、被告 沖縄県知事・沖縄市長

那覇地方裁判所 民事第1部合議係 御中

                   準 備 書 面(14)

      (本件アセスに新港地区のアセスの教訓が生かされていないこと)

 

1、        新港アセス書(平成67月)における新港地区埋立後のトカゲハゼ成魚・

仔稚魚への影響予測として、影響はほとんどないものとしていた。

2、        新港地区の埋立は昭和58年〜平成10年までに3次の埋立がなされたが、平

成1年頃の成魚363尾が工事の進行に伴い平成6年(第2次埋立頃)頃にかけて減

少傾向が見られ、平成6年9月には18尾まで減少し、平成109月まで21281

尾と少ない生息数となった。

そこで、平成6年から「人工干潟造成」をし、平成8年から連年数百匹前後の「人

工飼育稚魚放流」を始め、平成8年〜10年にかけては放流等によって個体数が維持

されるようになったが、特に天然生息地における個体数は壊滅状態となっている。

  その理由は、影響はないとされていた「水路部」(埋立地(人工島)と沿岸域

との間の干潟や浅場を指す)のトカゲハゼ生息域の環境条件が変化していた可能性

が高い。

  また、トカゲハゼ成魚は現在約1,000尾を維持しているとされているが、それ

は人工干潟へ稚魚を放流し続けているからであり、この放流を中止した場合には「資

源が激減する可能性が高い」ことも明らかである。

3、        泡瀬アセス書は、埋立工事等によるトカゲハゼへの影響について、「現状の

トカゲハゼ生息地は埋立工事による直接の改変はないこと」などを理由として、ト

カゲハゼへ与える影響は軽微である」としているが、前記新港地区での結果から見

ると、果たしてそのようになるのか疑問である。新港地区の埋立は泡瀬地区と同じ

く沿岸から距離を置いた「人工島」方式であり、その「水路部」の環境は変化しな

いことが前提とされていたが、現実には大きな環境変化が起こっていた可能性があ

るからである。

4、        また泡瀬アセス書では、トカゲハゼ保全のために人工干潟を創造することに

なっているが、「稚魚の放流」はしないとされている。しかし、トカゲハゼ保全の

ためには稚魚の放流が必要だとする新港地区に関する報告書もあり、放流なしには

トカゲハゼ保全はできない可能性が高い。人工干潟を作るからトカゲハゼ保全は可

能であるとは言えないのである。

5、本件埋立に関する環境影響評価手続における不備

  このように泡瀬アセス書は、新港地区でのトカゲハゼの保全の教訓が全く生か

されていない。泡瀬のアセスでは、この新港地区におけるトカゲハゼ生息数の壊

滅状況の原因を究明し、これと対比して泡瀬地区での予測をすべきであった。

6、        新港アセス書は事業の鳥類へ影響予測として、局所的には生息環境が変化す

る区域も考えられるものの、埋め立て計画地の東側の水路沿いには緑地帯が形成さ

れ、また埋め立て計画地の北東側の干潟域は野鳥の採餌・休息場所となるよう整備

されていることから、その影響は少ないとしていた。

  しかし、埋立実施前に1700羽、平成3年〜平成4年も冬期に1300羽程

度の水鳥が飛来していたが、平成14年〜平成15年には95羽しか記録されていな

い。

  この新港地区の埋立が鳥類に及ぼした影響については本件埋立に関する環境影

響評価手続当時にも当然判明していたはずである。また、新港地区以外にも人工島

の埋立で環境への影響が出ている例も報告されている。

  ところが、泡瀬アセス書はこの点を検討さえしていない。泡瀬のアセスは極め

て不十分である。