紙智子(共産党・参議院議員)の参議院・沖縄及び北方問題特別委員会における質疑および国の答弁(2011511日)

 

紙智子議員の国会質疑と答弁の「速報・未定稿」が届きました。正式には、国会・参議院に掲載されますが、暫くは、この速報記事をご覧下さい。

 

        枝野幸男大臣の答弁の要旨は

 

「津波や液状化のリスク、経済合理性について、検証し、見直し、沖縄市・沖縄県と相談、協議していく。埋立一部変更の手続きは進める」

 

ということになると思います。

 

以下、紙智子議員の質疑と大臣・関係者の答弁です。

○紙智子君 日本共産党の紙智子でございます。
 今日は私は沖縄の泡瀬干潟の埋立問題について、これ枝野沖縄担当大臣に対してお聞きしたいと思います。
 政府として、先月の四月二十六日に沖縄の泡瀬の埋立事業の計画変更を沖縄県に対して申請をしました。それで、枝野大臣は、国が示した留意点を地元で引き続きしっかり受け止めて、それに沿った対応で事業を進めてもらいたいというふうに述べられたそうなんですけれども、地震による液状化ですとか津波の影響などは考慮された上でこの事業を申請されたんでしょうか。
○国務大臣(枝野幸男君)
 泡瀬地区の埋立事業については、昨年七月に沖縄市が策定した土地利用計画を踏まえて国として埋立承認の変更申請を行ったところでございますが、今御指摘のような、特に今回の東日本大震災を踏まえて、津波やあるいは地震による液状化等の問題に対しての万全の措置については、今後、沖縄県における地域防災計画の見直し動向等を踏まえつつ、沖縄県、沖縄市と連携して適切に対応してまいりたいと考えております。
○紙智子君
 今回の東日本大震災は、津波被害の大きさと、それから埋立地が液状化ということでは極めて脆弱な土地ということが、私たちみんなが目の当たりにしたというふうに思うんですね。
 それで、ところが、県の防災計画の見直しをこれからやろうとしているんだけれども、これも待たずに言わば震災前の埋立ての計画をそのまま提出をしたということでありまして、これは政府の見識が問われる問題じゃないかというふうに思うわけです。
 それで、琉球大学の工学部の教授で島嶼防災研究センターの、これは併任ですけれども、教員の仲座栄三教授ですね、この方が、大震災を受けて、今回の津波や、それからかなり昔にあった明和の津波、大津波ってあるそうですけれども、これも踏まえれば、本島で十メートルを超えた津波を想定してよいと、防災計画を見直す必要があるということを指摘されているわけです。
 それからさらに、琉球大学の理学部の中村衛准教授は、琉球海溝でマグニチュード八・五の地震が発生すると、本島東海岸で二十メートルの津波が地震発生から二十分程度で到達するということを予測しているわけですね。
 私も認識を新たにしたんですけれども、全体としては沖縄では余り地震がないような印象ってあったんですけれども、決してそうじゃなくて、海溝なんかもそういう意味では実際に想定される、予測しなきゃいけないということでありまして、大臣はやっぱりこうした地震や津波の、大津波の危険性が指摘されている中でこの埋立事業を推進することが適切だというふうにお考えなのかどうか、お聞きしたいと思います。
○国務大臣(枝野幸男君)
 御指摘のとおり、今回の東日本大震災で改めて、津波に対する備え、それから液状化に対する備えということについては改めての見直しが必要であるというふうに思っております。当然のことながら、埋立てという海に近いところで行われる事業でございます。したがって、津波の影響についての考慮は必要でございます。また、埋立てということですので、液状化の被害の可能性についても十分備えなければいけないというふうに思っております。
 そうしたことによるリスクというものも、これは当然この埋立て承認の変更手続の手続が含まれている中に、この事業そのものは、沖縄市が土地利用計画を作って、それに基づいて国として埋立事業を行っていくその承認の手続でございますので、当然のことながら、お金を掛けて事業を進めていく、もちろん国もですが、沖縄市においてもその二つの点のリスクについてはしっかりと検証をしながら今後の手続を進めていくことになろうというふうに思っております。
○紙智子君
 それであれば、申請を出しているんですけれども、これは一旦取り下げるということでしょうか。
○国務大臣(枝野幸男君)
 今回の申請手続は、例えば津波や液状化によって被害が生じるリスクというような問題についての手続ではございませんので、手続については法に基づいて進めさせていただきながら、じゃ実際に埋立てというお金を掛けたり、あるいはその埋め立てた土地を利用した土地利用計画をお金を掛けて推進していくに当たっては、そうした今回の東日本大震災を踏まえたリスクの考慮の中でしっかりと改めての評価はしていくことになるだろうということを申し上げているものであります。
○紙智子君
 そもそもこの埋立ての事業というのは、元々自然破壊ということでの批判も強くありまして、これ二〇〇九年ですけれども、福岡高裁が経済合理性が認められないと、公金の支出は違法だということで判決を下しているものです。
 その上に今回のこの大災害を日本全体が体験をして、いかにしてこの先、災害に強い町づくり、国づくりを進めるのかということがまた課題になっているときです。液状化に弱いことが明白な埋立事業を従来どおり進めるというのが本当に適切なのかといえば、今大臣おっしゃったように、今のその事態を踏まえて見直さなきゃいけないというふうに言っているわけですけれども、一千億以上の総事業費だと、これに加えて、地震に弱い埋立地を更に強くするというんで巨額を投じてまで造成する必要があるのかというふうに思うわけです。これはやっぱり立ち止まって申請は取り下げるべきではないでしょうか。
○国務大臣(枝野幸男君)
 法に基づいて、実際に埋立てをしようと思ったらこうした手続を行っていかなければならないわけでありますので、それについての審査の手続は、これは進めさせていただきたいというふうに思っておりますが、当然、御指摘のように、東日本大震災の今回の様々な事態を踏まえて検証をした上で、まさにコストがどの程度、あるいはリスクがどの程度ということについては、これはそこを利用しようとしている沖縄市においてもしっかりと改めて御評価をいただくべきだろうと思っておりますし、埋立事業を行う国としても、改めてその点については同時並行で評価をする必要があるとは考えております。
○紙智子君
 一たび大地震が起きたときには、例えば沖縄の中部の地域でも、沖縄市のこの泡瀬からうるま市、うるま市の州崎まで含めて埋立地域一体が水没するということで警鐘が出されているわけです。
 それで、地元紙にはいろんな読者の方が声を載せていますけど、液状化や津波を連想させる土地をわざわざ購入しようという企業はないんじゃないかというようなことなんかも含めて、たくさんやっぱり声が寄せられているわけで、こういう声に真剣に是非耳を傾ける必要があるというふうに思います。
 それから、住民監査請求でこの福岡高裁那覇支部が、経済的合理性が認められない、事業を進める前提として相当程度の手堅い検証が必要だというふうに言って公金支出を違法としたわけですけれども、この高裁判決が求めた手堅い検証がじゃこの間されたのかということが問題なわけです。
 市の需要予測、沖縄県を訪れる観光客の予測ということでいいますと、二〇一八年に八百五十万人というふうになっているんですね。この数字というのは、二〇〇八年の六百五万人の一・四倍。二〇〇九年度の実績は、県の発表でいいますと五百六十五万人ですから、この沖縄市の推計六百三十万というのは既に六十五万人過大推計になっているわけです。新たに造るという多目的施設やスポーツコンベンション、それから宿泊、この需要予測が延べ四百十五万人となっているんですけれども、これは沖縄の最も有名な観光地でもありますみんなが行く首里城、ここが年間百八十万、それから海洋博公園が二百二十万ということから見ても大きく上回る数字なわけです。
 この需要予測が本当に手堅い検証だというふうに言えるのかというふうに思うんですけれども、これはいかがですか。
○大臣政務官(園田康博君)
 お答えを申し上げます。
 まず、需要予測と事業費の……
○紙智子君
 余り長くないように。
○大臣政務官(園田康博君)
 かしこまりました。失礼いたしました。
 まず、需要予測でございますけれども、沖縄市においては堅めの想定をされておられるということで私どもは承知をいたしております。そこの例で申し上げますと、県が、まず、先ほどおっしゃいましたけれども、平成二十八年には一千万人ということに対して、今回は私どもは、私どもって沖縄市ですけれども、平成三十年には八百五十万ということで、この辺については需要予測の伸びをそのまま堅めの推計値でやっていらっしゃるということで、そういった統計を基に算定をされているものであるというふうに認識をしております。
 それから、事業費に関しましても、これは今御指摘ありましたように、インフラ整備であるとかあるいはスポーツ施設、そういったもの、上物の施設の整備に係る経費、これについて投資額全体で一千二十億円ということで見込んでおりまして、その小さい規模とする、大体八割の推計でこの事業費が計画をされているというふうに認識をさせていただいております。
○紙智子君
 県の需要予測の八掛けなんだから堅いんだという話なんだけど、八掛けだからいいというものじゃなくて、実際に需要予測自体をもっと現実に即してこれ見直すべきだというふうに思うんですよ。
 変更計画では埋立面積が百八十七ヘクタールだったわけですけれども、今度小さく半減したということで九十五ヘクタールに減っているわけですけれども、その事業費の土砂の処分場造成整備費ということでいうと、二〇〇〇年段階三百八億円だったのが今年は三百三十二億円で二十四億円の増になっているわけですよ。だから、国の埋立事業費ということで比較すると、これまでに支出した額も含めて約一・八倍になっているんですね。だから、計画そのものの面積が半減しているのに何でこの整備費は倍近くになるのかとか、それから土地利用の計画についても、そういういろいろ見直しというんだけれども、県民とか市民に対してはこれは十分説明されているわけじゃないわけです。
 それから、内閣府に聞いたら、九人の有識者から意見を聞いたというんですけれども、これは匿名を条件にしていると。名前は出さないでということで条件にしていて、しかも泡瀬に行ったことのある人というのは一人か二人しか入っていないと、で、自然環境の専門家は入っていないと。
 大臣、担当大臣にお聞きしたいんですけれども、こういうふうな責任が要するに問われないような形で意見聴取して、経済合理性を相当手堅くこれは検証したというふうに言えるんでしょうか。
○国務大臣(枝野幸男君)
 手続としては少なくとも違法ではないというふうに思っておりますが、先ほど御指摘のとおり、東日本大震災の事態を踏まえた津波リスクであるとか液状化リスクというものについては恐らく十分にはその中には含まれていなかっただろうというふうに思われますので、そうしたことも含めた上で、本当に経済合理性があるのかどうか、沖縄市とも御相談をしたいというふうに思います。
○紙智子君
 この泡瀬干潟は、環境省が昨年の九月に、ラムサール条約登録湿地の条件を満たしている湿地であるということでこれ候補地に選定した干潟ですよね。それで、この計画進めるに当たって、干潟の消失分が最初の一八%から二%まで減るんだから大丈夫だという話もあったんですけれども、これは、やっぱり専門家の方から言わせると、生態系全体に影響を及ぼす、そのことをやっぱり本当に考えられていないという批判もあるわけですよね。それで、この間、国土交通省の交通政策審議会の港湾分科会の中でも、埋立ては可能な限り回避するとともに、当該区域を埋め立てる場合には、自然環境への影響を最小限に抑える必要があるんだと、環境省からこういう意見が付けられたという経過もあったわけです。
 そして、この間、修学旅行生も随分行っているわけですけれども、非常に干潟を見に行って感動しているわけですよね。こんなにたくさんの生物がいるというふうに思わなかったという驚きの声なんかも寄せられているわけで、やっぱり沖縄の観光の主力ということでいうと、修学旅行というのは本当にその中でも相当主力を占めているわけですけれども、貴重な自然と触れ合える泡瀬の干潟を保全して地域の財産として生かすことが大事だというふうに思うんです。
 泡瀬干潟の自然を生かした観光振興計画こそが重要なんじゃないかというふうに思うんですけれども、この点での大臣の御認識を伺いたいと思います。
○国務大臣(枝野幸男君)
 沖縄の一つのアドバンテージを持っている部分は豊かな自然環境にあるというふうに思っております。そうした意味では、観光資源としてその豊かな自然環境というものを十分に生かしていくことが沖縄の振興にとって重要だろうというふうに思っておりますし、干潟についてもその大きな要素であるというふうに思っております。
○紙智子君
 時間になりましたけれども、経済合理性から見ても、それから今度の地震災害や環境への影響から見ても、埋立事業から撤退するというのが私は今の段階で政府の取るべき選択だというふうに思いますし、そのことを強く申し上げまして、質問を終わります。

 

 

参考:質疑にでてくる「有識者」の見解まとめ(内閣府資料)は、下記をご覧下さい。

http://www.awase.net/maekawa/yuusikishaiken.htm

 

また、仲座栄三教授の指摘は次をご覧下さい

http://www.awase.net/maekawa/20110430tunami.htm

 

さらに、中村衛準教授の指摘は下記をご覧下さい。

http://www.awase.net/maekawa/nakamuramamorutimes.htm