沖縄市の東部海浜開発(泡瀬埋立)事業の新しい土地利用計画案(以下、新沖縄市案)問題点について

20101214日 泡瀬干潟を守る連絡会

(※201235日時点まで分かったことで、修正してある)

 

以下図表は、沖縄市案を貼り付けてある。

図表の後ろに、連絡会の問題点指摘を赤で、解説を青で示してある。

 

上記は新沖縄市案の計画図である。

問題点  泡瀬干潟を守る連絡会

1.  旧案(2012年案)の規模を縮小(187a⇒96ha⇔ 2011年国申請では95ha)しただけである。

2.  人工島でありながら、アクセス道路については、沖縄県事業として詳細(規模・費用)は不明であった。

   (その後県事業の詳細が分かった20111115日)

                      単位千円

総事業費内訳

事業費額

事業費区分

財源内訳

埋立事業

その他

国費

県費

埋立及び関連事業費

24,206,259

6,044,601

18,161,658

17,660,746

6,545,513

インフラ等整備費

6,426,050

0

6,426,050

1,711,772

4,714,278

合計

30,632,309

6,044,601

24,587,708

19,372,518

11,259,791

インフラ整備は、人工ビーチ(突堤工事、潜堤、中仕切り堤、養浜)造成費、アクセス道路費、などである。

埋立費は今後予定されている、県担当分(約9ha)の埋立費用である。

 

 http://www.awase.net/maekawa/20111115kenjyouhoukoukaisiryou.htm

3.  「大型クルーズ船岸壁の整備を取り止める」ことになっているが、観光船・小型船だまり・マリーナは旧案通り計画されている。

4.  人工島へのアクセス道路は旧案に比べ、長さ・幅も拡大(4車線・約900m・歩道付き)されている。

   その費用も110億円で、国費は99億円(9割)であることも分かった。

5.  この区域(第1区)は生物多様性の宝庫であり、サンゴ・海藻草類・新種の動植物・絶滅危惧種が生息している。

6.  スポーツコンベンション(公共施設)、民間部門(ホテル・医療施設・商業施設)が計画されているが、公共施設は赤字、民間部門も不透明であり、将来性・経済的合理性が無い。将来、沖縄市の財政に大きな悪影響を及ぼす。

7.  この計画の作成、提出過程が、市民無視・選挙公約違反であり、前原大臣(当時)の承認も民主党政権のマニフエスト・政策インデックス2009・沖縄ビジョン2008に違反している。

8.  この計画のために、様々な数値が予測されているが、科学的根拠が無く、ペテン・トリックの産物である。(具体的には後述する。)

上記は、新沖縄市案の「用途及び面積」である。

問題点 泡瀬干潟を守る連絡会

1.  健康医療施設用地8haがあるが、進出希望企業は無い。

2.  商業施設(SC、飲食店、ショッピングモール、レストラン、8.5a)があるが、進出希望企業は無い。

しかも、沖縄市周辺(うるま市・北谷町)にはSCが乱立し、旧アワセゴルフ場跡地(北中城村)や宜野湾市西海岸にも大型のSCが建設予定である。

3.  ホテル・コンドミニアムあるいはコテージ進出希望の企業2社はあるが、「進出意向」を示しているだけであり、確定ではない。

上記は新沖縄市案の「需要予測」である。

問題点  泡瀬干潟を守る連絡会

1.  宿泊については、別記で批判する。商業・健康・医療については、進出希望企業が無いことから「絵に描いた餅」である。

2.  機能別の需要予測約415万人(延べ人数、毎日11,369人)は、H21年度の沖縄の有名な観光地の訪問者数、首里城180万人、海洋博公園220万人を上回っている。埋立地は、超沖縄一の観光地になる想定は、余りにも現実離れしている。

3.  多目的広場・展示、交流(スポーツコンベンション施設)は毎年1.8億円の赤字を産む施設である。これは、後述する。

4.  沖縄市には、泡瀬埋立地近郊(米軍泡瀬通信施設・北側)に沖縄マリーナがある。その利用状況は、年々減少している。経営は、苦しく、サムズバイザシー(レストラン)で成り立っていると思われる。また、県の中城湾港マリンタウンプロジエクト(与那原・西原地区)の主要施策に掲げていた「与那原マリーナ」の整備事業が企業の破綻や不況によるボート愛好家の減少により変更を余儀なくされていることは、新聞でも報道された(20091118日、「琉球新報」)。このような状況の中で、沖縄県は全県の小型船舶所有者に対して、マリーナ利用や泡瀬埋立地のマリーナ利用意向調査を2010年初め頃に実施し、その結果を集計し、その結果をもとに需要予測しているが、そのデータの使い方に間違い(泡瀬マリーナを利用予定の人は181名であるのに、276名が利用する予測になっている)もあり、また「レジャー白書08」などの全国の平均的なデータで需要予測を推計するなど、実態を無視し、単なる期待値になっている。沖縄市案では、立地希望のマリーナ経営者はいない。また、沖縄市周辺・埋立地周辺で「小型船だまり」で賑わっているところはない。

   マリーナの問題点は、下記をご覧下さい。

   http://www.awase.net/maekawa/mari-na20110605simpo.htm

  

5.        民間部門の計画は沢山あるが、進出希望の企業は、僅か2社であり、ヒヤリング結果は次の通りである。(情報公開で取得した沖縄市資料

 

 

 

 

 

 

上記3つの資料は、新沖縄市案の内容である。波及効果を示しているが、根拠になった資料は「平成12年度版沖縄市産業連関表(以下、12連関表)」である。その後、12年度沖縄市産業連関表に間違いがあり、それは訂正された。また平成17年度版の沖縄市産業連関表も作られ、それによる修正も行われている。詳細は下記をご覧下さい。

    http://www.awase.net/maekawa/17hakyuu.pdf

問題点 泡瀬干潟を守る連絡会

1.  波及効果は需要をもとに計算するが、沖縄市は、就業者数(まだ実際の数値ではない、民間企業がすべて進出したとして想定している)をもとに計算している。産業連関表の利用を間違っている。これから出される生産誘発額149億円(平成17年度版では137億円)は、「虚構」の数値である。

2.  1,933人(平成17年版では1,961名)で60億(平成17年版では48億円)の雇用者所得誘発額を計算している。私たちは、職種ごとの就業者数、その所得額を示すように要請しているが、産業連関表から引き出した数値なので、個別のデータは分からない、と答弁している。1,9331,961名)の種別、人数も明らかに出来ないで、60億円(48億円)を示す沖縄市案は、本当に経済的合理性を示し得るのか疑問である。これでは、現在の沖縄市の職種別ごとの所得と比較できない。また、市民への説明責任もはたしていない。単純にひかくすると、一人年間245万円(48億円÷1,961245)、月額20万円(245÷12=20)になる。泡瀬干潟埋立地関係で働く人は、平均月20万円の高給取りである。

  沖縄市の民間企業の平均賃金との比較ができない。 

   パソコンで計算してあるから、詳細は示せないという沖縄市の態度は、産業連関表やその数値を使った計算の方法が分からない人は、沖縄市案を批判するな、ということであり、「市民を馬鹿にした態度」といわれても過言ではない。

3.  使われている「建設投資額」は総事業費ではない。総事業費は前に記述した。

http://www.awase.net/maekawa/20111115kenjyouhoukoukaisiryou.htm

4.   

332億円

沖縄県

306億円

沖縄市

262億円

民間

197億円

1,097億円

新港地区浚渫費

357億円(別途会計)

合計

1,457億円

 旧案(H12年案)は、面積が187aで総事業費は483億円であったが、新沖縄市案では規模は半分(18796a95ha)になったのに、総事業費は1,097億円となる。1haで比較すると、旧案は、2.6億円(483÷187=2.6)であるのに新案は11.6億円(1,097÷95=11.6)になり、1haあたり、約4.5倍(11.6÷2.6=4.5)になる。面積は半分なのに、経費は4.5倍もかかる? おかしな話である。

 また、民間の197億円は民間総事業費であり、ホテル・土地購入代約16a52億円と医療・商業施設土地賃貸権利金6億円(年間)は含んでいないので、これが失敗すると、沖縄市が土地購入費・賃貸権利金を負担するので、沖縄市の負担は増える。

 

 

 

上記の資料二つは、新沖縄市案・「市の財政への影響」である。

問題点 泡瀬干潟を守る連絡会

1.  波及効果の問題点、「虚構」の数値であることは前に指摘した。

2.  稼動時30年間で67億円の赤字であるから、年間2.2億円の赤字である(67÷30=2.2)。しかし、この数値も間違っている。

3.  この計算で沖縄市案は根本的な誤りを犯している。新沖縄市案では、民間企業が全て順調に行ったとして、市民税・固定資産税の税収は全て収入とされているが、地方交付税を交付されている沖縄市は、税収の増加分の75%は「基準財政収入額」に算入され、その分地方交付税が減少し、実質沖縄市の税収増加分は25%である。約2億円の25%5千万円の増収にしかなりません。30年間では、5千万×3015億円です。沖縄市案の税収57億円増加は、実質15億円の間違いです。30年間では、119393415109億円の赤字である。年で計算すると、3.6億円の赤字(109÷30=3.6)である。

4.  このような間違った計算については、沖縄市議会の答弁でも「地方税交付の影響については詳細を検討していない。事業段階での税収増加として計算している」ことを認めていますから、「市財政への影響」も再度検証する必要があります。

5.  沖縄市案は、「市の財政への影響」で、実質公債費比率の最大値は15.8(リスクケースでも16)であり、財政指標でみる市財政の健全性は確保されるとありさらに、民間への土地売却価格が10%下がった場合でも実質公債比率は16%であり、レッドカードの18%を下回っているから、市財政の健全性は確保できるとしている。これらの試算は、上の税収の間違いや、民間部門が失敗した場合は当てはまらない。しかも、今後30年間は、沖縄市が東部海浜開発(泡瀬埋立)事業以外では起債は一切行わない(他の事業では30年間は起債できない)ことを想定している。国の財政が厳しい折、沖縄市の財政は益々硬直化し、他の事業での財政支出、この事業での失敗等で、公債比率は18%以上になるおそれがあり、沖縄市は「債権団体転落」になる危険性は一層増大する。

 

環境への配慮については、様々述べているが、間違いを指摘する。

 

1.第U区は中止だから、干潟は98%のこり、干潟・クビレミドロは保全できるとあるが、この考え方は、生態系を無視したものである。

2.干潟の機能は、干潟とそれに続く浅海域を一つの生態系として考えるのが科学的な常識であり、干潟に続く浅海域96a(T区)を埋めれば、残った干潟が正常であるはずは無い。現に、2区の自然環境は劣化している。

3.埋立地T区は生物多様性の宝庫であり、サンゴ・海草藻類・新種・貴重種・絶滅危惧種の生息地であり、沖縄県も評価ランク1に指定したところである。そのような貴重な場所を埋めて、干潟が保全されるとは、世界の笑いものである。

4.環境省は、2010930日に、埋立予定地T区を含め、中城湾北部(泡瀬干潟を含む)全体を、ラムサール条約登録候補地に選定した。選定理由は、中城湾北部が登録の世界基準を十分満たしている、世界に誇る貴重な場所だからである。

 

私たちの訴え

 

自然を破壊し、経済的合理性の無い、しかも需要予測がペテン・トリックである新沖縄市案を即時撤回し、泡瀬干潟埋立計画を即時中止せよ。