沖縄青年会議所主催の「公開討論会」(5月20日、沖縄市ミュージックタウン音楽広場)での、埋立推進の予定候補者の意見に対する「泡瀬干潟を守る連絡会」の見解。
2012年6月22日 泡瀬干潟を守る連絡会
埋立推進の予定候補者 (50音順) |
公開討論会での意見(「琉球新報」の記事による。) |
小渡亨氏 |
この事業を一貫して支持してきた。私は泡瀬で生まれ育った。もし反対派が主張する状況なら私が真っ先に反対している。 |
金城勉氏 |
事業推進の決議が市議会で3回行われた。雇用創出、地域経済を発展させる起爆剤として全議員が後押しした事業だ。 |
桑江朝千夫氏 |
事業を推進して雇用を創出し、リゾート地として観光立県に貢献する。沖縄市が将来発展し続けるためにも絶対推進すべき。 |
玉城満氏 |
沖縄市発展の望みだ。工事状況は6,7割進み、この段階で事業中止、復旧すると予算もかかり自然破壊につながる。 |
小渡亨氏への、泡瀬干潟を守る連絡会の見解
1.「反対派が主張する状況」をどのように捉えているか、不明であり、何を主張しているかよく分からない。
2.小渡氏がいう「反対派が主張している状況」が仮に、「経済的合理性がない」、ということであれば、埋立に経済的合理性がないことは、あまりにも明らかである。具体的には下記である。
@需要予測がデタラメ。沖縄市の県観光客数予測は、2011年は128万人も過大予測である。
A市計画でも完成後、30年間、毎年2.2億円の赤字を予測している。
B民間(ホテル、商業施設)が計画されているが、地震・津波・液状化などの恐れがあり、進出するか全く不明。市は、民間企業進出で経済波及効果があると言っているが、架空の需要予測に基づいている。
C将来性がないマリーナ(与那原マリーナ、宜野湾マリーナ、沖縄マリーナを見れば歴然)が計画されている。
D観光客船、釣り船船などの小型船溜まりも将来性がない。
E津波の避難高台、避難タワー、避難ビルもない危険な場所である。
F人工ビーチは復帰後各地に作られてきたが、各自治体はそのメンテナンス(例えば台風後の砂流出・補給)に費用がかかり、財政を圧迫している。また、人工ビーチの砂はチービシなどから採取され使われているが、環境破壊の元凶として問題になっている。
G埋立地の人工ビーチは、連絡会の試算では、約70億円の支出である。完成後の費用対効果も明らかにされていない。(他の人工ビーチは、閑古鳥が鳴いている。例えば、豊見城市の豊崎埋立地の800mの人工ビーチは三分の一しか使われていない。)
H隣のうるま市のFTZ用地も「中部発展の起爆剤、沖縄市・うるま市の失業率解消」の謳い文句で進められてきたが、民間分譲率僅か2.1%、失業率は逆に増加であり、中部の活性化になっていない。売れない土地の尻拭いで460億円の県税が使われている。
3.小渡氏がいう「反対派が主張している状況」が仮に、「環境破壊である」、ということであれば、具体的に次のことがあげられる。
@沖縄県も、「自然環境保全の指針」で評価ランク1(厳正な保全地域、工事をしてはならない区域)として指定してきた。
A国・環境省も、日本の重要湿地500に選定し、ラムサール条約登録の候補地として選定し、埋立工事を行わないように意見を述べている。また、ラムサールCOP11では、日本国の報告書で、泡瀬干潟埋立による重要な場所の一部消失の懸念が表明されている。
Bこれまで、新種、貴重種、絶滅危惧種が多数発見・確認されてきた。それらの種が、埋立工事の進行により危機的な状況にある。アメリカなどでは、新種が一つでも発見されれば、公共工事は即ストップである。
C漁業、自然環境保全にとってきわめて重要な、海草藻場が埋立てられている。沖縄観光の目玉であるサンゴも生き埋めになっている。
Dこれまで満潮時でも海面上に有った砂州が水没し、ウミガメ、コアジサシの産卵場が失われてしまった。
4.小渡氏がいう「反対派が主張している状況」が仮に、「津波・液状化対策がない」ということであれば、具体的にしめすと次のことがあげられる。
@3.11後(2011年4月)に埋立変更の申請がなされているが、前の計画より、埋立地の地盤高が下げられた。
A将来、泡瀬一帯に6〜7mの津波の襲来が予測されているのに、その対策が全くない。
B県の報告でも泡瀬一帯は「液状化の危険が高いところ」となっているのに、今の埋立計画は液状化対策が全くない。
C津波対策には高台、避難タワー、避難ビルが必要であるが、その計画が全くない。
金城勉氏への、泡瀬干潟を守る連絡会の見解
1.
沖縄市議会が全会一致で進めたのは、2000年以前の話である。泡瀬干潟の価値が再認識され、埋立に様々な問題があることが判明した2000年6月以降は、全会一致ではない。
2.
また、2006年の沖縄市長選挙では、埋立一期・二期全面推進の候補者は当選できず、市民の意見を聞き、検討会議で検討し慎重に進めることを公約した候補者が勝利した。
3.
2010年の市長選挙も、全面推進の二人の候補者に対し、「埋立に合理性がなければ推進しません」を公約した人が当選した。埋立推進は、沖縄市民の世論ではない。むしろ、埋立反対が多数であることは、様々なマスコミの世論調査で明らかになっている。
4.
「雇用創出、地域経済を発展させる起爆剤」にならないことは、小渡氏への見解で述べた。
桑江朝千夫への、泡瀬干潟を守る連絡会の見解
1.
小渡氏、金城勉氏への見解と同じであるが、「雇用の創出」については反論する。
@
スポーツコンベンション施設では、雇用の創出は望めないことは、「県泡瀬総合運動公園」を見れば明らかである。埋立地にサッカー場、テニスコート、ソフトボール場、屋内ドーム等ができても雇用の創出は期待できない。「沖縄県泡瀬総合運動公園」の運営は、赤字である。
A
民間の進出で「雇用の創出」を言うのであれば、その実現性はきわめて難しい。
@
ホテル(300室)、商業施設、等は本当に立地するか不明である。
A
医療施設が計画されているが、計画段階から現時点まで、進出希望の企業はない。
B
人工ビーチでの雇用の創出は、小渡氏への見解に示したように、困難である。
C
埋立地が雇用の創出にならなかった例は、うるま市FTZ、宮古トゥリバー計画、石垣市新港地区埋立地、糸満市西崎、豊見城市豊崎、大宜味村海岸埋立地など数多くある。
D
アワセゴルフ場が返還され、その跡地に計画されている北中城村の大型開発事業(ホテル、医療施設、商業施設、住宅施設)は、泡瀬干潟埋立地とも競合し、埋立地での雇用創出の阻害要因になる可能性がある。
2.「リゾート地として観光立県に貢献する」とあるが、反論する。
@世界に誇る生物多様性の宝庫、渡り鳥の休息地を破壊し、「観光立県」は逆立ちしている。
沖縄県への観光客の期待は「自然豊かな亜熱帯の沖縄、サンゴ、海草藻場のある沖縄」である。サンゴ、海草藻場を生き埋めにして、観光客誘致は逆立ちである。
Aリゾート地の条件は、「サンセット」がまず上げられる。埋立地は「サンライズ」であり、世界的にも、或いは沖縄でも、サンライズのリゾート地はほとんどない。
B観光立県を言うのであれば、今の豊かな自然が残る泡瀬干潟・浅海域をそのまま残し、ラムサール条約に登録して保存し、エコツーリズムの拠点としての活用を考えるべきである。
玉城満氏への、泡瀬干潟を守る連絡会の見解
1.「工事状況は6,7割進み、この段階で事業中止、復旧すると予算もかかり自然破壊につながる。」と言う見解は、事の本質を誤魔化し、既成事実を積み上げてきた推進者の手助けをする論法である。埋立進行による「自然破壊」には目をつぶるのか。
2.泡瀬干潟・浅海域がどのような場所であるのか、保全されるべき場所なのか、埋立てられてもいい場所なのか、そこが先ず問われなければならない。
3.工事が9割進行しても、その工事が自然破壊、漁業破壊であることが判明し、工事をストップし、護岸を取り除き、自然を再生した事例はある。鳥取県の宍道湖・中海干拓事業がその代表的な例である。
4.再生事業は、沖縄市が予算を出すのではなく、環境省、農林水産省、国土交通省が出す。
宍道湖・中海は農林水産省が再生事業に事業費を支出している。
1.
自然再生には様々な工法・考え方があり、全国でも様々な例があり、参考にすれば解決できる。
2.
「沖縄市発展の望み」でないことは、小渡氏への見解で述べた。また、旧コザ市の美里村との合併で言われた、「海に面した街・港のある街」の望みは、新港地区の西埠頭で実現されている。しかし、西埠頭が造成されても「沖縄市の発展」にはなっていない。埋立地にさらに港(マリーナ・小型船溜まり)を造ることは、逆に沖縄市の財政を圧迫し、沖縄市発展を阻害する要因でもある。