沖縄市、東部海浜開発(泡瀬埋立)事業、「土地利用計画見直し」の主な経過と問題点

 

泡瀬干潟を守る連絡会(201013日)

 

1.最近の経過、市民部会

 09121日、沖縄市活性化100人委員会・東部海浜開発土地利用計画見直し部会(以下、市民部会)は、これまでの審議を経て、主案(エコ・健康保護・国際観光リゾートタウン → 世界一大きなプールを造る案)と副案(健康を創り出す島)を決定した。これは、123日の新聞にも報道された。

 

 

主案(エコ・健康保護・国際観光リゾートタウン → 世界一大きなプールを造る案)

 

副案(健康を創り出す島)

 

この市民部会の案は、1224日の東部海浜開発土地利用計画検討調査委員(以下、専門部会)では、資料―2−1土地利用計画(案)で報告されたが、これについて専門部会では十分な審議もせず、報告事項として処理されていた。

私たちは、市民部会は「市民の意見も聞いた」として利用される、いわゆるキセルとしての役割であり、このような委員会のあり方は、大きな問題であると指摘してきたが、まさに、その通りであった。市民部会はこれまで414日から121日まで、27回開催され審議してきたが、専門部会では、「一顧だにされなかった」という印象である。

 

2.専門部会

1224日に開催された第4回専門部会は、3回委員会まで審議してきた4つの案(市民部会の案とは全く違う案)の中から絞り込んだ二つの案から1つの案を決定するために開催された。

3回委員会までの案(4つ)

この中の二つの案の詳細は下記です。

1案:国際交流リゾート拠点形成()

 

2案:スポーツコンベンション拠点形成」()

 

専門部会としては、2案:スポーツコンベンション拠点形成」()を委員会の案として決定しました。

 

3.専門部会の案として決定された、スポーツコンベンション拠点形成」()の概要

  詳細は、下記をご覧下さい。

沖縄市東部海浜開発局、計画調整課のHP 第4回委員会の報告

http://www.city.okinawa.okinawa.jp/site/view/contview.jsp?cateid=91&id=6571&page=5

 

概要をまとめると次の通りです。

 

(1)アクセス道路は、今の仮設橋梁の位置で4車線にする。(1本の道路で可能。以前の案は、沖縄市ITワークプラザ隣からもう1本のアクセス道路)

(2)公共用地が65.9%、宅地(民間)34.1%

(3)概算事業費は、97、184、710千円(971億円)になる。単位千円

 

国負担

35,700,000

埋立関係

県負担

18,100,000

港湾施設関連

公共系

14,397,000

 

民間系

28,897,710

 

合計

97,184,710

 

破綻した平成12年当時の187a埋立での総事業費は654億円(埋立工事は489億円)と言われていたのに、今度の案は規模は約半分(96a)になったのに

総事業費は、972億円(概ね1000億円)と、346億円と増えている。奇奇怪怪である。その積算の根拠を明らかにすべきです。

問題点

(1)国事業費(国負担)の埋立1区域の当初予算は192億円である。これまで220億円支出した(092月議会での県答弁)。

   上記概算では、国負担は357億円になっている。何故大幅に増えているのか。説明責任が有る。国は、増加分を負担するのか?

(2)県の港湾施設費は約108億円であったのに、上記概算では、181億円になっている。

(3)県の負担は、港湾以外に埋立工73億円、インフラ整備費74億円が明示されていない。

(4)沖縄市負担のインフラ整備費91億円も不明である。これらのインフラ整備費は、公共系費用に含まれているのか、不明である。

(5)民間系289億円の根拠も不明である。

(6)総じて、この概算事業費は全く理解できない。

 

参考に、187aの時の総事業費を示します。(以下)

 

沖縄市議会に出された資料(05年度議会資料:池原秀明議員への提供資料)

中城湾港泡瀬地区公有水面埋立事業

事業費

総事業費 65、471百万円

@ 埋立造成事業費(埋立竣工までの事業費) 48,926百万円

事業区分

事業費(単位:百万円)

国事業費

埋立T区域

19,291

埋立U区域

11,493

小計

30,784

県事業費

埋立工

7,330

付帯工(港湾施設)

10,813

小計

18,143

合計

48,926

Aインフラ整備事業費 16,544百万円

事業区分

事業費(単位:百万円)

県事業費

7,430

沖縄市事業費

9,114

合計

16,544

B 事業費合計 65,471百万円

事業区分

事業費(単位:百万円)

国事業費

埋立T区域

19,291

埋立U区域

11,493

小計

30,784

県事業費

埋立工

7,330

付帯工(港湾施設)

10,813

インフラ整備

7,430

小計

25,573

市事業費

インフラ整備

9,114

小計

9,114

合計

65,471

引用者注意 この費用は、事業費のみで用地代は含んでいない

 沖縄市用地代(沖縄県から購入)  2億円ha.  90ha.×2180億円(売却でペイする?)

 沖縄県用地代(国から購入)    2億円ha.  175(全体)- 90(沖縄市売却分)=85ha.

 85ha.×2億円=170億円

沖縄市負担合計 91141800027,11427T億14百万円)

 

以上ここまで、沖縄市議会に提出された資料。

 

(1)土地利用面積

 

用地名称

 

面積(ha

比率(%)

破綻した平成12年当時の面積案(下記)a

公共用地

道路用地

車両中心

歩行者中心

  小計

7.8

2.7

11.5

8.1

2.8

 

 

 

16.3

緑地

 

 

海浜緑地

野鳥園

外周緑地

  小計

13.2

1.0

9.8

24

13.8

1.0

10.2

14.1

1.0

11.0

31.4

多目的広場用地

(スポーツ、健康・医療、環境用地)

 

14.5

15.1

17.8(多目的広場)

公園・緑地等関連施設用地

 

2.3

2.4

5.3(中央緑地)

港湾関係用地」

 

 

客船埠頭

 

2.0

 

2.1

2.0

小型船だまり

マリーナ

 

5.0

 

5.2

 

6.1

交流展示施設用地

 

5.0

5.2

5.5

小計

 

63.3

65.9

 

宅地

宿泊施設用地

 

 

 

 

ホテル1(300)

ホテル2(250)

コンドミニアム(150)

コテージ(30)

 

 

 

 

16.7

 

 

 

 

17.4

 

 

 

 

37.3

商業エンターテイメント施設用地

 

3.0

3.1

12.7(複合商業施設)

臨海商業施設用地

 

 

3.0

3.1

1.6(臨海商業施設)

健康医療施設用地

 

 

8.0

8.3

2.3(海洋療法施設)

小計

 

32.7

34.1

 

合計

 

 

96

100.0

 

 

破綻した平成12年当時の案(次表)と比較してみましょう。

専門部会の決定した案は、破綻した平成12年当時の案とほぼ同じで、研究施設・教育文化施設がなくなり

宿泊施設・商業施設が約半分になり、道路用地などが縮小されただけです。

 

(2)土地の平均売却額の比較

 

 

 

民間売却(ha

公共施設用地の購入費に対して

 

補充なしの場合

(/u)

 

補助率1/2の場合

(/u)

 

補助率9/10の場合

(/u)

 

1案:国際リゾート

44.9

県からの購入価格

13,200

県からの購入価格

10,800

県からの購入価格

8,900

2案:スポーツコンベンション

35.8

県からの購入価格+

21,900

県からの購入価格+

16,300

県からの購入価格+

11,800

1案−2案=平均売却額比

 

8,700

5,500

2,900

 

この金額を、平成12年当時の案の場合と比較してみます。

沖縄市が県から購入する予定価格は20,600/uでしたから、補助なしで購入した場合、20,60021,90042,500/uになり、約2倍の価格になります。

ちなみに、隣のうるま市・新港地区の現在の売却価格は、5割引の場合、13,350/uですから、泡瀬埋立地の場合、約3.2倍の価格になります。

 控訴審の証拠資料では、埋立地は民間に売却するので沖縄市の負担はほとんどない、などと主張していましたが、現在の案は、公共用地が約66%ですから

公共用地を沖縄市が負担するとなると、前の表(概算事業費)にあるとおり、約144億円を沖縄市が負担することになり、莫大な金額になります。

民間売却は35.8aとなっているが、どこの企業に売却するのか、全く分からない。売れない時の土地代負担(35.8×10000×42500円=約152億円)は何処が責任を

とるのか?

 

4.専門部会案の問題点

(1)採算性、企業動向調査、経済的合理性を全く検討していない。その問題は、「事業者(県・市)の責任であり、この専門部会は、案を決定するだけである」と言う

委員長の冒頭発言で審議が行われている。委員会のこれまでの検討してきた案を沖縄市が委託したコンサルタントが仕上げ、それを承認しただけである。

(2)この委員会は、メンバーに、沖縄総合事務局開発建設部長、沖縄県土木建築部長、沖縄市副市長などが居るが、事業に責任を持つ委員が居ながら、採算性を抜きにした案を専門部会の案として決定したことは、無責任であり、あまりにも拙速にことを進めている。

   (公共系事業費を約144億円想定しているが、県・市はそれに責任が持てるのか、決定した責任はどうなるのか)

(3)企業の意見を聞いたとしているが、問題点が多い。

   ●16社に意見を聞いているが、企業選定の基準が示されていない。

   ●審議している2案のどちらがいいかを聞いただけである。(2案とも良い:6社、1案がいい:2社、2案がいい:5社)

   ●審議している2(事業)魅力があるかを聞いただけである。(魅力がある:10社、現時点で分からない:4社、魅力を感じない:2社)

   ●最も重要な「埋立地に企業を立地するか」の調査が全く行われていない。

(4)埋立地(96ha)の約66%が公共用地なのに、ゾーニング(国、県、市がどの面積をどのように使うか)が未決定であるし、国、県、市のどちらがどのような施設を作るのか、全く不明である。公共系の事業概算約144億円を何処が負担するのか全く不明である。以前の案はゾーニング(土地処分区分図:ゾーニング)は決まっていた。その案を参考に示します。下表・別添2.

薄緑色の部分は、沖縄市が責任をもち、民間に売却する土地(約90ha)で、ピンク色の部分は、県が責任を持ち売却する土地(約85a)でした。

合計は175a18717512aは護岸・道路・緑地など国管轄の土地になる。

(以上、以前の案のゾーニング案)

 

(5)埋立地の売却価格も平成12年当時と比較すると、2倍(42,500/u)になっており、公共用地が66%もあり、沖縄市の負担もあると予想される。これまで市民負担がないと言って来た事が、誤魔化しであったことが明らかになっている。また、民間に35.8a売却になっているが、どの企業が購入するのか、全く不明である。売れない時の負担も明確でない。(以前の案では、売れない時は、国有地のまま残る、と議会で答弁していた。)

(6)平成12年当時の案が実現できなくなり土地利用計画の見直しを進めてきたのに、出来上がった案は、破綻した案とほとんど同じであり、規模を縮小し、スポーツ施設を少し追加し、名前を「変更」しただけである。沖縄タイムス(文末資料、マスコミ報道)は、「主要部は旧案縮小版」、と解説している。

   マリーナは西原・与那原埋立地でも失敗し、近くの沖縄マリーナも営業が不振なのに、以前の案そのままであり、「見直し」もない。

   ※マリーナ構想については、以前に 問題点(クリック)  を指摘しました。

(7)これから、3月末にかけて、採算性や企業動向調査をするとしているが、不況の社会情勢・観光業の不振・失業率の増加などを考えると、僅かの期間でそれができないことは明白である。結局、コンサルの仕上げた「仮想の観光客数・企業動向調査」で沖縄市の最終案が出来るのではないか?

   最近のマスコミ報道は沖縄県の観光客減少を報道している(今年の観光客6.6%減、35年間で最大の危機等)のに、ホテル1300室)、ホテル2(250)、コンドミニアム150室、コテージ30戸を計画している。09年度の観光客数は、県見通しで、前年比6.6%減の約565万人、そして沖縄県観光連盟は、2010年観光客数は、前年比3.0%減の545万人を予測し、10年以降も引き続き厳しい状況になると予測しているのに、決定した案の需要の検証では、H20605万人から毎年増加で、H30850万人H303.18/人を想定している。根拠とする数値の過大見積もりである。そして、宿泊施設が本当に立地するのかも明らかでない。宿泊施設の規模は縮小しているのに、港湾施設(客船埠頭)は以前の案そのままであり、真剣に「見直した」のか大きな疑問である。

      ※沖縄県の観光客数の減少については、次の → 新聞報道 をクリックして見てください。

(8)これから、市民の意見を色々な場所で聞く(市民意見の募集)としているが、限られた場所・人の意見募集であり、それが沖縄市の最終案に反映され得ないものであり、案に対する市民意見はこのような結果でしたと、報告されると予想される。市民の意見を聞くとして、10ヶ月かけて100人委員会・「市民部会案(世界一大きいプールを造る)」も提案されたが、専門部会では全く無視された。

(9)アクセス道路は以前の案に比べ、距離が約3倍になり、車線も4車線になり、さらに緊急時(津波襲来など)の時の対応の付帯施設も考える(委員会意見)となっている。スケールメリットが半減した90aの出島のために、約800mの4車線の大規模な橋を造るために、莫大な国税が投入される。その概算額も明らかでない。

(9)前原誠司国交相(兼沖縄担当相)10月に沖縄市長との面談で指摘した「事業に採算性があるのか? ペイできない時沖縄市が負担できるのか?」に応えられる土地利用計画見直し()になっていない。

10)現政権の「公共工事見直し」「無駄な税金を省く」「コンクリートから人へ」の政策の中で、3月末に出来る沖縄市案が前原誠司大臣に提示された時、「立派な案であり、経済的な合理性のある案」との判断が出ることは予想されない。

11控訴審判決は、次のことを判決文に示している。

新しい土地利用計画は、従前の土地利用計画と異なり第1区域のみを対象としたものであることから、その対象面積は半分となる上、アクセス道路も限定されたものとなり、従前であれば発揮できたかもしれないスケールメリットさえ放棄せざるを得なくなる可能性もある。

◎新たな土地利用計画に経済的合理性があるか否かについては、従前の土地利用計画に対して加えられた批判を踏まえて、相当程度に手堅い検証を必要とするものであり、・・・。

◎現時点においては、・・経済的合理性の調査・検討がなされていない以上、今後策定される予定の土地利用計画を前提として、・・変更許可が得られる見込みがあると判断することは困難である。

 

    沖縄市が急いで作る「沖縄市案」が控訴審判決に応えられる内容でないことは、明白である。

 

(12)     仮に、このような問題点のある「沖縄市案」で事業再開が決定されるなら、新たな住民監査請求、裁判闘争が想定される。

 

 

 

 

 

5.マスコミの報道

 

(1)琉球新報(1225日)

 

(2)琉球新報「社説」(091228)

 

 

(3)沖縄タイムス(1225)

 

 

4.赤旗(1225日)