5回 東部海浜開発土地利用計画検討調査委員会報告

1033日、沖縄市中央公民館)

 

東部海浜開発土地利用計画検討調査委員会(以下、専門部会)が開かれました。最終案を審議し決定しました。今後はこの案をもとに、沖縄市の最終案が3月末に決定され、前原大臣に提示することになっています。

しかし、最終案を審議し決定したのに、「具体的な土地利用計画」を明確に示しきれず、委員からは様々な問題点が指摘されました。また、説明も、沖縄市負担が176億円なのか184億円なのか修正の繰り返しで、混乱していました。

以下、速報記事(前川盛治・泡瀬干潟を守る連絡会・事務局長の文責)です。詳細は、幹事会で審議し掲載します。

 

専門部会最終案の問題点

 

1.        本計画の主要な部分の具体的な案を提示できていない。

 

本計画の主要な部分(スポーツコンベンション拠点形成)の多目的広場や交流施設は、「公共が整備し管理等を民間へ委託するなど事業のスキームを想定している。これについては、今後事業の具体化に向けて、一層の公共負担の削減を目指し、民間活力の導入も視野に検討を行っていく。」と示すだけで、具体的な案を提示できず、土地利用計画が「夢」の段階のままである。

 

2.        アクセス道路がどうなるか、出島の根本問題が解決されていない。

 

出島へのアクセス道路は、土地利用計画の根幹であり、具体的に提示しなければならないのに「アクセス道路の線形及び構造(橋梁、盛り土等)、取り付け位置については、本計画の中では概ねの位置で想定している。これについては、今後事業の具体化の中で、事業のB/Cや導入する事業手法(補助事業)、交通量解析などを勘案し、詳細に検討を行ったうえで設定する。」としている。事業の具体化、事業手法、など基本的な問題が何も具体化されず、交通量解析も行っていないことを自ら暴露している。委員からは「土地利用計画の中で策定すべきだと非難し、道路は環境に配慮するよう提言している。(琉球新報記事)」と指摘されている。

   アクセス道路については、第4回専門部会(091224日)で、「第3回委員会で指摘事項(要旨)と対応」で、「計画の1路線、計4車線のアクセス道路で対処が可能である。」と対応を示していたのに、今回の案では、それさえ示しきれなかった。227日の沖縄での88年ぶりの大地震と津波警報、28日のチリ津波警報と津波襲来という問題に対応できていないことが明らかである。出島方式の根本的な問題が解決されていない。

 

3.        用地購入費は、全額沖縄市が負担することになっている。また、用地購入費の詳細を示しきれていない。国は、用地購入費を提示できていない。

 

前回専門部会(091224)で示された用地購入費は、次のようになっていた。

土地の平均売却額の比較

 

 

民間売却

 

公共施設用地の購入費に対して

補充なしの場合

(/u)

補助率1/2の場合(/u)

補助率9/10の場合(/u)

2案:スポーツコンベンション

35.8a

県からの購入価格(20,600)21,900

合計42,500

県からの購入価格+16,300

 

合計36,900

県からの購入価格+11,800

 

合計32,400

 

これが、今回は次のようになっています。

表 沖縄市購入用地

 

支出(購入、整備)

収入(売却、補助金)

 

面積(ha

単価()

支出額(百万円)

面積(ha

単価()

収入額(百万円)

公共用地

25.5

20,600

5,253

25.5

20,600

5,253

民間用地

32,1

20,600

6,613

32.1

31,380

10,072

小計

57.6

 

11,866

(119億円)

57.6

 

15,325

インフラ整備

 

 

5,632

(57億円)

 

 

2,223

合計

 

 

17,548

 

 

17,548

この表を見ると、公共用地の支出(購入)の額は、収入(補助金)と同じですから、公共用地は、ペイできることになっていますが、実際は、沖縄市役所内の他の部局が事業をする時に、購入することになるから、沖縄市が負担することには変わりありません。

 

インフラ整備費も5,632百万円の支出に対して収入(補助金)2,223百万円とありますから、約4割、県・国から補助があることになっています。

県・国は本当に補助するのでしょうか。コリンザの県債権32億円の放棄も困難であるのに埋立地に関しては、大盤振る舞いです。大丈夫でしょうか。

前回委員会(091224日)では、購入費は上の表(32,400円〜42,500円)になっていました。この表は、大幅に改定されたのですか。その理由は何でしょうか。

 

民間への売却も、一旦沖縄市が購入して、インフラ整備費を付加して民間に、31,300/uで売却することになっています。31,300円が、購入費+インフラ整備費とすると、インフラ整備費(5,6322,223)+購入費(6,613)=10,022(百万円)になりますが、この金額も用地代を20,600/uと仮定した数値ですから、大きく変動します。

民間用地も一旦沖縄市が購入することになっていますが、売れない時はどうなるのでしょうか。旧案では、売れる土地だけを沖縄市が買ってインフラ整備して売却するから沖縄市の負担はゼロといっていましたが、今回は沖縄市が一旦買いますから、売れなかったら、66億円以上の負債です。銀行利子返済だけでも大変です。

また、土地売却額も単価20,600/uも ※で「単価20,600円については、さらに精査していく予定」としているように、確定した額でもないようです。

金額を意図的に低く見せようとしています。

 

この表は、176億円は相殺されるから、沖縄市の負担にはならないことをしめしていますが、これは民間に土地が売却できた時、公共用地の購入費を全額補助(国)した場合の想定です。民間に売却できない時(十分想定できる)、国の補助がないとき(十分想定できる)は、184億円+176億円−インフラ整備費57億円=303億円、沖縄市の負担になります。沖縄市は、第2の夕張市です。

 

沖縄市が購入する用地は、今回はっきりしました。

                 公共用地

民間用地

車両道路用地

歩行者道路

多目的広場

交流施設用地

栽培漁業センター用地

民間用地

 

2.6

2.0

16.0

2.9

2.0

32.1

57.6

 

ところが先に示した表 沖縄市購入用地 に示したように、公共用地は、沖縄市が購入(支出)するが、収入は、沖縄市役所内の他の部局が事業をする時に、購入することを収入としていますから、沖縄市が負担することには変わりありません。沖縄市の事業に国が全額補助すれば相殺されますが、そうでない時は沖縄市負担です。

また、民間地も沖縄市が購入して、インフラ整備費を付加して売却することになっています。民間地が売れない時、沖縄市の負債になり、大きな問題です。

購入額も20,600/uとしてありますが、「さらに精査していく」とあるように、はっきりしていません。

 

4.        沖縄市の投入額(事業費)は184億円(1273700万円+インフラ整備費57億円=184億円)です。

 

  事業主体毎の投入額は下記のように示しています。

 

内容

投入額

前回示した額

埋立に係る費用

357億円

357億円

沖縄県

港湾施設

238億円

181億円

沖縄市

インフラ整備、施設整備

(多目的広場等)に関する費用

184億円

143億円

民間

宿泊、商業、健康・医療施設等の整備に関する費用

260億円

289億円

合計

 

1,050億円

972億円

 

沖縄市の事業費は、184億円と説明していますが、184億円の説明も、176億円に修正され、また修正され184億円になった。

また、合計1,050億円も、計算すると1,039億円になり、信用できる金額になっていません。

沖縄市の事業費も、前回案より、約39億円増加しています。計画が進むにつれ、沖縄市の負担は、増加しています。

 

また、沖縄市が負担する概算整備費(上物施設等の整備)が示されています。

 

施設規模

事業費単価・円・ha

概算事業費

多目的広場用地

広場用地13.5a

ドーム施設・直径140

医科学センター・0.4a

 

20,000

4,000,000,000

1,100,000,000

27億円

60億円

11億円

交流施設用地

市民外国人の交流施設1ha

外郭部分1.9a

209,000

600,000,000

209千万

24700万円

栽培漁業センター用地

栽培漁業施設・外郭部分2a

600,000,000

6億円

合計

 

 

1273700万円

ここに示された1273700万円とインフラ整備費(先の表の、57億円)を加えた額、184億円が沖縄市の事業費になります。

しかし、これは、用地購入費(公共53億円、民間66億円、計119億円)を含んでいませんから、沖縄市の負担は、184億円+119億円=303億円になります。

大変な金額です。

 

5.        降って湧いた「栽培漁業センター」に行政(沖縄市)6億円の負担

 

 これまで市民部会(27回)、専門部会(4)が開かれてきたが、計画の中に1度も出てこなかった「栽培漁業センター」2haが突然降って湧いて来た。上記概算に有るとおり、行政(沖縄市)が6億円負担するとある。委員も「スポーツなどのコンセプトとあわない。販売目的なら商業施設に取り入れるべきだ(タイムス記事)」と批判している。

 「栽培漁業センター」が計画に入り、前回案では交流施設5aになっていたのに、2.9aに縮小されている。前の計画の交流施設(コンベンション)5000人規模の会議場は、どうなったのでしょうか。計画がクルクル変わります。

 「栽培漁業センター」については、平成12年当時の旧案にもあったが、設置主体の中城湾沿岸漁業振興推進協議会(沿振協)は、「組織と資金面で無理」として、計画を断念した経緯がある。沖縄市の担当者は「沿振協から、提案して欲しいとの話があった。今後関係機関と調整していく」と話しているが、沿振協からの要請に対して、沖縄市(行政)が造ってあげるという気前の良さである。漁業補償に約20億(国負担、沖縄県立替)を使い、今度は沖縄市が、「栽培漁業センター」6億円のプレゼントである。公平・公正な税金の使い方が望まれる。

 

6.        ホテル構想はまたまた縮小、しかし客船埠頭はそのまま、しかも港湾整備費は57億円も増加

 

 前回の案のホテル構想は、クルーズ船客・外国観光客用の高級ホテル300室、国内旅行客の中級ホテル250、家族旅行客のコンドミニアム150室、コテージ30戸になっていましたが、今回はホテル部分が、300室の中級ホテルになっています。約半分になりました。クルーズ船客・外国観光客用の高級ホテルが消えました。ところが、クルーズ船の客船埠頭費用(沖縄県負担)は181億円から238億円になり57億円も増えています。全く矛盾しています。

 またホテルなどの民間部分も、具体的にどの企業(ホテル・業者)が立地するか、何も示されていません。民間に土地が売れない時、土地代は沖縄県・沖縄市の何処が負担するのだろうか。

 

7.        観光客数予測、利用者延べ人数も、相変わらず過大見積もりをしています。

 

 平成30年の観光客数が850万人との予測は変化していません。観光客数については、県でも減少傾向にあることを認めています。2009年度は、前年比5%減の560万人で、10年度も減少を予測している。

平成30年度、850万人の観光客、沖縄市への観光客は1.6%、泊は2.72泊、東部海浜泊需要12万泊は、過大見積もりです。その数値を使った東部海浜(埋立地)の延べ利用者数580万人/年も過大見積もりです。仮に850万で計算しても、沖縄市観光客は14万人(実績1.6%)で、これまでの実績9万人を引いて、その残りが埋立地に来るとしても5万人です。延べ人数の計算では、埋立地の観光客は9倍の45万人で計算されています。埋立地の商業施設(SC:ショッピングセンター)に住民が260万人/年、観光客57万人/年来るという数値も1日約8400人が来ることになり、信じられない数値です。観光客45万人/年推定なのに、57万人/年、という数値はどこから出てきたのでしょうか。臨海商業施設(ショッピングモール、レストラン等)にも47万人/年とあります。11,300人(観光客+住民)がショッピングに来ることになります。駐車場はどうなるでしょうか、アクセス道路は渋滞しませんか。沖縄市に隣接する北中城村アワセゴルフ場跡地に巨大商業施設が予定されています。北谷美浜、天久新都心、近隣のショッピングセンター、豊見城豊崎のアウトレットモールとの競合は大丈夫なのでしょうか。

 

8.        人口の増加予測も、全くデタラメです。

 

 資料では、平成17年度の人口をもとに、国立社会保障・人口問題研究所の推計(県全体、沖縄市)、現況の推移(国勢調査)からの推計(コザ・石川圏)をもとに平成30年の人口を予測しています。

 

沖縄県

コザ・石川圏

沖縄市

平成17

136.2万人

31.8万人

12.6万人

平成30

142.4万人

46.0万人

13.9万人

 沖縄県全体でも6.2万人しか増えないのに、コザ・石川圏では14.2万人増加する予測です。全くデタラメな予測です。コザ・石川圏が何処を含んでいるか不明ですが、いずれにしても使われている数値がデタラメです。他の数値も推して知るべしです。

 

9.具体的な計画もなく、数値も過大見積もりをしておきながら、3000人の雇用創出、沖縄市の税収が3億円増加などと「夢」が語られています。それに対し委員からは「この段階でこれだけの数値を出すのは危うく、一人歩きしすぎている(琉球新報記事)。」「根拠のデータが適正か分からず、現時点で予測数値を出すのはふさわしくない(タイムス記事)」と批判されています。

 

10.マリーナについては、企業ヒヤリング調査で「近年の動向を踏まえてマリーナ需要は将来的にも厳しい見通しとの意見もあった。」と紹介しながら、計画はそのままである。マリーナに関しては、沖縄県港湾課が県のボート所有者に「中城湾泡瀬地区マリーナ(仮称)の保管需要に関するアンケート調査」を実施(20101月)しているが、その結果は反映されているのだろうか。調査結果の公表が必要だ。

  港湾施設(客船埠頭、小型船だまり、マリーナ)の述べ利用者数も28.5万人/年になっています。1日約794人が利用することになります。隣接する沖縄マリーナや那覇・

安謝港の実態を見ているのだろうか。客船埠頭は東京港晴海ふ頭ターミナルの事例を参考に就業者数(12)を予測しているが妥当だろうか。

 

11.まとめ

 

 見てきたとおり、この案は「経済的合理性」を全く示していません。これから沖縄市が検討し、3月末に「沖縄市案」を決定するといいますが、後わずか20日あまりで、計画が具体化され、経済的合理性が示せないのは、あまりにも明らかです。沖縄市は、計画を断念し、泡瀬干潟再生の事業を再構築する時ではないでしょうか。

 沖縄市の英断を期待したい。

 

新聞報道(琉球新報、34日)です。

 

沖縄タイムス 34日 ↓