意見陳述書 根保幸栄

 

 私は、根保幸栄です。原告の一人として、意見を述べさせてもらいます。

 私は、国主導の干潟埋立工事に県民・市民の税金を無駄遣いすることに反対です。とくに

その結果が取り返しのきかない自然環境を破壊し、市民の憩いの場を奪い、市民の将来にわ

たって犠牲を背負わせるものとなることは明らかであり、このような不当な公共工事は即刻

取りやめるべきことを、強く求めるものです。

 泡瀬干潟の貴重性・重要性は、あらゆる分野・角度から明らかにされており、限られた私

の時間で言う余裕もないが、国は、新港地区の浚渫土砂の捨て場として、そこを埋立て始め

ています。沖縄市のリゾート計画は、財政困難などの理由から棚上げされており、しかも

一昔前のバブル期の計画には合理性もなければ実現できる見通しもありません。結局、この

埋立が終われば、国の港・航路浚渫だけが完成し、残されるのは、今の新港地区以上の荒れ地

と沖縄市の莫大な借金―将来に亘る市民への負担だけです。

 沖縄市には、いま現実に生活し労働している13万市民がおり、市内で営業している他市町村

の人々もいます。行政には、この市民の皆さんの暮らしと営業を守り、街の平和的・文化的発展

を図る責務が第一です。

 私は、泡瀬干潟に近い高原7丁目に住んで10年余になりますが、市はこの一帯を区画整理事業

のなかで第一種住宅専用地域に指定、当初、建築制限や屋敷囲いへの指導など住環境の保全を謳い

文句にしていました。ところがいま、荒れ放題の空地や野放しのゴミの投棄、そこへマンション

    アパートが無制限に乱立、路上駐車や交通渋滞、生活道路への迂回、車両の進入など、学校教育

にも地域住民の生活にも日常的に危険と不安を与えています。このような状況は市内各地に見られ、

商店街がシャッター通りと化していることとあわせて、行政の責任がするどく問われています。

市民福祉の向上に責任を負う行政ならば、国の水先案内人となり、将来に禍根を残すような開発は

直ちに中止し、とくに沖縄市は県内のなかでも市民所得は低く失業率が高く、中小零細企業の倒産

も相次いでいる今日、行政の緊急適切な対応を、私は強く求めるものであります。

 国・県・市は自らの工事促進のために、埋立地の一部分を米軍に管理権を与えるなど、基地強化、

永久化に手を貸しています。市民には基地の役割り、機能など何一つ説明もないまま、市民の財産を

壟断するがごときは許されません。

 泡瀬干潟埋立は、これまで国・県・市の三者が一体となって強引な手法をとって進めてきたが、

まだ間に合ううちに工事を中止するよう重ねがさね要求します。

 私は、少年時代を旧与那城村の宮城島で過ごし、干潟に対する愛着を強く持っています。泡瀬干潟

にも足を運び余暇を楽しんできました。当裁判所の公正な判断をお願いして、私の陳述を終わらせて

もらいます。