前川盛治(泡瀬干潟を守る連絡会・事務局長)

今回の告示・縦覧について

1.告示・縦覧のあり方は、問題だらけです。港湾課を訪ねて要請しましたが、他の告示・縦覧もそうなっている、という返事です。情報公開では可能かもしれない(縦覧期間の66日を過ぎるかも知れない?)との返事もありましたので、情報公開の請求はやりました。
2.意見書は、用紙・形式はありません。住所・氏名・意見要旨を記入の上、沖縄県土木建築部港湾課宛に郵送で可能です。後日、私たちのHPawase.net)に私の意見を掲載しますから、参考にしてください。意見書は、県民以外でも提出できます。
3.今回の変更手続きは、環境影響評価(アセス)は、ありません。規模縮小なので、従前のアセスは有効であるという見解です。今度の書類の中にも「環境保全に関し講じる措置を記載した図書」がありますが、従前の「環境監視委員会」に提出した、平成20年度、21年度の調査資料が記載され、あいも変わらず、「環境への影響はありません」などとの記述があるだけです。新しい事業(前の事業は裁判で否定され、新たな事業として取り組んでいる)なので、アセスは必要という意見が常識ですが、埋立法の欠陥を見ての申請の仕方です。沖縄市が関係した専門家の委員会の委員長(池田孝之琉大教授)も新しい事業なので、アセスは実施されるべき、と意見を述べていましたが、「無視」されています。
4.今回の申請の問題点は沢山あると思いますが、速報として簡単にまとめると次のようになると思います。


詳細は、書類のコピーを入手し、分析したあと、HPで公表したいと思います。


問題点(速報)


1.需要予測が甘い・間違いだらけ、しかも経済合理性のない沖縄市案をそのまま認め、事業を推進するものである。県・国の出発点は、沖縄市の需要予測のデータである。

H30年観光客数850万人、沖縄市観光客数68万人、東部海浜訪問者41万人、延べ利用者数、年間415万人→この予測はデタラメ、統計学のレベルに達していない、観光客数の減少傾向の実態を無視した「虚構の数値」である。進出希望は僅か2社、しかも確実ではない。医療施設は進出希望企業はない。宿泊も予定しているホテル300室・コテージ30・コンドミニアム150は確実ではない。大型SCは隣接地に沢山あり、立地するかどうかも分からない。)
2.今回の大震災を教訓としていない。沖縄の防災専門家は沖縄でもM8.5、津波10m〜20mは想定しなければならないと警鐘を鳴らしている。海の埋立地についても、見直さなければならないと指摘しているが、これらは何も考慮されていない。
3.枝野沖縄担当大臣の511日の紙智子参議院議員への国会答弁「津波、液状化の対策については、県の防災計画の変更を見て対応する。リスク等については、沖縄市・国も検証し評価しなおし対応する。経済合理性も沖縄市と相談する。」でも明らかな様に、今後、検証・見直し、金額面も見直し、沖縄市の財政に与える影響も検証しなおさなければならないのに、事業は進行していくという矛盾を抱えている。
4.沖縄市が計画案に記述してある総投資額は、1,020億円であるが、これは、沖縄市への国庫補助が含まれていない。それを入れると総事業費は1162億円以上になる。それも津波・液状化のリスクは考慮されていないから、今後事業費はもっと膨れ上がると予想されるが、それが、沖縄市財政に与える影響は何も考慮されていない。沖縄市案では、「事業公債費比率は16%であり、危険水域の18%も下回っているから、市財政の健全性は確保できる。」とあるが、震災対策を考えれば沖縄市の公共工事費(スポーツコンベンション拠点形成)はもっと膨れ上がることを考えれば、沖縄市の財政は、公債費比率が18%に達し、危険水域に突入することは予想される。
5.完成も国平成283月、沖縄県平成3210月となっており、規模は縮小されたのに、工事期間は永くなっている。
従前の計画(187a)の埋立は「着手から59月以内」となっていた。今回は、面積が半分、しかも護岸はほぼ完成しているのに、「23年着手から完成までは5年」は、長すぎるし、長い期間、海上工事によって海を汚染し続けることになる。県の完成もH32年となっており、着手23年から9年もかかる。沖縄市の様々な需要予測は、平成30年を基準にしているが、それとの整合性もない。
6.
アクセス道路については、「長さ890m、4車線、沖縄市国体道路とつなぐ」とだけ記載があり、工事費、震災対策などの記載は一切ない。与那原・西原の埋立地は陸側と3本の橋でつながれているが、それでも津波襲来の時の防災上の問題点が指摘されている(加藤祐三琉大名誉教授、519日、新報論壇。)1本(4車線)で大丈夫なのか、何も検討されていない。関連して、埋立地内の避難場所(高台)などは、全く考えられていない。

沖縄市の計画では、延べ利用者数は年間415万人、1日平均11,369人(延べ人数なので、三分の一で計算しても3,800名)の人が避難する20m以上の高台、面積にして、一人1uとして、3,800u(0.4a)の高台が必要になる。この「高台」は何処に作るのか、何処が金を出して造るのか?
7.国が埋立に使う新港地区東埠頭の整備の浚渫土砂は、491㎥(変更前885㎥)とある。従前の約55%の利用である。この事業の国の目的は、東埠頭が早期に使えるようにするためであるが、浚渫土砂の利用は約半分であるから、泊地・航路は半分しか利用できないとなり、目的は達成されないことになる。国の工事着工の目的に大きな問題点がある。「工事着工ありき」の批判は当然である。半分の浚渫土砂でも東埠頭は十分使えるとなれば、従前の885㎥の浚渫は、世界に誇る貴重な泡瀬干潟を「浚渫土砂処分場」で破壊してもかまわないという、自然環境破壊の行為・計画であったことが明かである。
8.沖縄県の埋立工事の「設計概要説明書」の商業施設その2の地盤高が、従前C.D.L.5mとなっているのに、今回(変更後)C.D.L.4mになっている。大震災を考慮すれば、+5mより、さらに高くならなければならないが、逆に1mマイナスの+4mになっている。縦覧した3名と記者で何度も確認したが、その通りである。説明が、「泊地・航路の浚渫土砂のバランスを考慮してとある」。掘削された航路はこれ以上広げない、マリーナ・小型船だまりの泊地の面積が縮小したため、「浚渫土砂の数量が減少したためバランスを考慮して」地盤高が低くなった、とある。これは、まさに大震災による被害についての考慮が全くない事例の一つである。このような全く杜撰な計画で進められる埋立を許してはいけない。
9.アセスが実施されていないことは、上に記述した。埋立地(1区)の中に約1,000uのサンゴ礁があったこと、それが事業者の責任ではなく、沖縄市や民間NPO法人が「一部移植したこと、その結果」等は、何も記載がない。また、埋立地(1区)の中には、海草藻場が残っているはずだが、何も記載がない。もちろん、従前の計画の時の「代償措置としての海草移植」については、詳細がない。