2006年10月13日

                     

泡瀬干潟を守る連絡会

                     共同代表 小橋川共男 漆谷克秀

記者会見

 

泡瀬干潟、海域に生息する2種の新種記載について

 

沖縄市泡瀬干潟では,新種のホソウミヒルモ,ニライカナイゴウナなどいくつかの新

種と考えられる生物が確認されているが,今年に入って泡瀬に生息する2種の生物が,

正式に新種記載されたので報告する.

 

1.ユンタクシジミ

ユンタクシジミは,泡瀬干潟生物多様性研究会などが泡瀬干潟でも確認していたが,本

9月に発行されたVenus(日本貝類学会誌),63巻3号で新種記載された.

 

記載論文
Lutzen, J. & Kosuge, T. (2006) Description of the Bivalve Litigiella
pacifica n.

sp. (Heterodonta: Galeommatoidea: Lasaeidae), Commensal with the Sipunculan

Sipunculus nudus from the Ryukyu Islands, Japan. Venus, 63 (3): 193-202.


ユンタクシジミの分類は以下のようになる.
軟体動物門二枚貝綱異歯亜綱ウロコガイ上科
科名:Lasaeidae(チリハギ科)
属名:Litigiella(和名なし,日本新記録属)
種学名:Litigiella pacifica Lutzen & Kosuge, 2006
種和名:ユンタクシジミ
タイプ産地(模式産地):沖縄県石垣島名蔵湾
分布:沖縄島(沖縄市泡瀬干潟),石垣島名蔵湾

記載者はJorgen Lutzen(ヨルゲン・ルッツェン)博士(コペンハーゲン大学生物学研究

所)と小菅丈治氏(西海区水産研究所石垣支所).

 

特徴:星口動物門のスジホシムシの体表に着生する.楕円形の小型(殻長約6mm)の二枚

貝.

近縁種はヨーロッパ(大西洋)に分布し,やはりスジホシムシに着生するLitigiella

cuneoti (Lamy, 1908)で,pacificaという学名は太平洋に分布する種ということを示し

ている.

この種は現在,泡瀬干潟と石垣島名蔵湾でしか確認されていない.泡瀬干潟の個体群の

保全は重要である.

 

写真1.2006年8月5日 泡瀬干潟・クビレミドロ砂州 

採取:前川盛治   撮影:小橋川共男

写真2.20041020日 写真提供:山下博由

 

写真3.20041020日 写真提供:山下博由

 

2.ヒメメナガオサガニ

 

この新種の発見は,2005年10月に沖縄タイムス紙上などで報道されていたが,本年4月

に動物分類学の国際雑誌であるZootaxa1171巻において新種記載された.

記載論文

Nagai, T. Watanabe, T. & Naruse, T. 2006: Macrophthalmus (Macrophthalmus)

microfylacas, a new species of sentinal crab (Decapoda: Brachyura:

Ocypodidae) from western Japan. Zootaxa, 1171: 1-16. Magnolia Press.

 

 

ヒメメナガオサガニの分類は

節足動物門甲殻綱十脚目

科名:Ocypodidae(スナガニ科)
属名:Macrophthalmus(オサガニ属)
種学名:Macrophthalmus (Macrophthalmus) microfylacas NAGAI, WATANABE & NARUSE, 2006
種和名:ヒメメナガオサガニ
タイプ産地(模式産地):沖縄島中城湾泡瀬
分布:沖縄島(中城湾,金武湾),熊本県天草,長崎県島原,愛媛県高浜,和歌山県串本,

静岡県下田

記載者は長井隆氏((財)沖縄環境科学センター),渡部哲也氏(熊本大学沿岸域環境

科学教育研究センター合津マリンステーション),成瀬貫氏(シンガポール大学生物科

学).

特徴:近似のオサガニ類よりもごく小型(甲幅約1cm)で,体色の濃淡が明瞭である.

この種は,比較的多くの場所で確認されているが,タイプ産地(新種記載の担名タイプ

標本の産地)が泡瀬であることは重要である.すなわち,泡瀬に分布するヒメメナガオ

サガニは,この種の分類において基準となるものとして見做される.そのため,泡瀬の

ヒメメナガオサガニの個体群は学術的な重要性が高いと言える.

ヒメメナガオサガニは,沖縄では水深2〜4mの白砂やサンゴ礫の内湾に生息しており,

しばしばリュウキュウスガモの海草場で見られるとされる.

このような生息環境は,泡瀬で現在進行中の海上工事現場周辺に多く見られ,現在の工

事がヒメメナガオサガニの個体群に負荷をもたらしている可能性がある.生物学的な常

識的な判断として,ある生物のタイプ産地の個体群を滅ぼすような行為はつつしまれる

べきであると考えられる.

 

    以上のように,今年に入って,泡瀬干潟に生息する生物が2種も新種記載された.そ

のため,開発事業者はあらためて,泡瀬干潟の生態系の重要性を見直すべきである.ま

た,これらの2新種の泡瀬における生息分布状況を詳細に把握し,充分な保全策が講じ

られるまで,工事は中止されるべきであると指摘される.

 

用語解説

タイプ(Type)=タイプ標本(模式標本):学名の基準になる標本の総称.

担名タイプ:学名の基準になる標本.ホロタイプ,レクトタイプ,シンタイプ,ネオタ

イプの4つがある.

タイプ産地(模式産地):担名タイプ標本が採集された場所.

ヒメメナガオサガニの場合,担名タイプであるホロタイプ(完模式標本)の産地が泡瀬

であるので,タイプ産地は泡瀬になる.パラタイプ(副模式標本)には担名機能がない.

関連記事     「琉球新報」20051015

沖縄タイムス(2005年10月15日,夕刊5面)

新種カニ発見/長井琉大講師

 琉球大学大学教育センターで甲殻類の生態を研究している非常勤講師の長井隆さん(36)=滋賀県出身=がこのほど、沖縄市などの中城湾内で新種とみられるカニを発見した。

 ヒメメナガオサガニ(仮称)で触角のような長い目を持つメナガオサガニ類の一種。大きさは既存の種類の約半分(甲羅の幅約一センチ)で、指の先に乗るほど。既存種よりも、体の大きさと比べて目が長い。はさみが大きく、体の色の濃淡がはっきりしているのが特徴。

 生息域は二―四メートルの海底で、直径約五ミリの巣穴にすむ。長井さんは「小さすぎて見つけにくい。見つけても既存種の子どもとしかみられなかったのだろう」と推測する。

 今年八月、採取した約百匹のメナガオサガニ類のカニの中から模様や形が異なる数匹のカニを発見した。個体を持ち帰り、同大学特別研究員の成瀬貫理学博士と共同で調べ、新種と判明。中城湾内と金武湾内で約七十匹採取した。