意見陳述書 伊礼一美

 

 私が泡瀬干潟埋立問題に関心を持つようになったのは、新種の可能性のある貝「ニラ

イカナイゴウナ」や新種の海草「ホソウミヒルモ」が発見されたというマスコミの報道

がきっかけでした。それ以来、泡瀬干潟は不思議なところだと思うようになりました。

新種がこれからも発見されるかもしれない。実際、それからあとも新種が発見されてい

る。干潟が作り出す生物の世界を、私たちが十分知らないうちに埋立ててしまったら取

り返しのつかない禍根を残すことになりはしないか。とりあえずは埋立を凍結、中断し

て干潟の徹底調査をすべきではないかと考えるようになり、自分なりに干潟に関する文

献にあたり、認識を深めるように努めました。

 干潟は海洋生物と陸生生物が入り混じったところであり、無数の底生動植物が生息し、

そのことが、@干潟の生産性を高め、A浄化機能の価値を高め、B魚介類の仔稚魚の生

育場所としての価値を高めている。特に、私は、魚介類の仔稚魚の生育場所(海のゆり

かご)としての価値に注目するようになりました。

 私は、農民の息子として生まれ育ち、稲作に関わってきた経験を持っています。ご存

知のように、稲作は、稲の種をまき、苗を育てることから始まります。苗を育てる田ん

ぼは、苗代といって、肥沃な土壌、水が豊富で風が静かな条件が必要です。この苗代と

干潟は共通の価値を持つものであり、干潟は「海の苗代」といってもいいのではないか、

泡瀬干潟は、沖縄一の「海の苗代」と呼ぶのにふさわしいのではないか、と思うように

なりました。私は、周囲の人々には「海の苗代」である泡瀬干潟を、埋立から除外させ

ようと訴えています。

 泡瀬干潟を守る連絡会作成の「泡瀬干潟エコツーリズムマップ」は、豊かな泡瀬干潟

の状況を詳しく紹介しています。それによると、沖縄には海草は14種あるが、泡瀬には

13種が生息している、貝は320種が生息し、死貝を含めると500種確認され県内最大の

貝の生息地であるといわれています。カニも新種の「ヒメメナガオサガニ」や絶滅危惧

種の「シオマネキ」等多くの種類が生息し、鳥類はシギ・チドリ類など95種が普通に見

られ、165種が沖縄野鳥の会で確認されています。サンゴも沖縄の他地域(特に西海岸)

では見られなくなった「ヒメマツミドリイシ」が海草と群生し約3万uの広がりで残っ

ています。

 このように泡瀬干潟は、泥質干潟、細砂性干潟、粗砂性干潟、礫質干潟と多様な干潟

があり、それに続く海草藻場、サンゴ礁に囲まれ、陸の比屋根湿地とともに重要な生き

ものの生息する場所になっています。様々な種類の生物が数多く生きていることは、地

球にとって、また人間にとって、大変重要なことであることが分かってきました。

 1992年、様々な種類の生きものが、この地球から消え去ることのないように守り、育

むための国際的な取り決め、「生物多様性条約」ができ、日本もこの条約に入りました。

その生物多様性の場の一つが、「海の苗代」である泡瀬干潟ではないでしょうか。

 美しいサンゴ礁や干潟を永久的に私たちの子孫に残すために、裁判官の良識の発揮を

期待し、意見陳述とします。