原告意見陳述書            嘉陽宗儀

 私は原告の一人として、貴重な泡瀬干潟は絶対に埋め立てるべきではないという意見を述べます。私は泡瀬の海の近くで生まれ、育ちました。終戦の廃墟と化して食料もまともにない時代に、その海の豊かな生き物たちは私を含めて実に多くの人々の飢えをしのぎ、命をつないでくれました。私はそこでよく泳ぎ、遊び、健康で丈夫な体に育つことができました。まさに海に助けられた一人です。だから私はどんなことがあっても干潟を守らなければとの思いで本裁判の原告に参加したのです。

 私が特に強調したいのは財政問題であります。私は県議会議員でありますが現在の沖縄県の財政状況は深刻な事態になっていることを痛感しています。現在、国も地方自治体も借金が膨大になり財政難に見舞われています。05年度末の県債残高は合計で8千3百33億9千万円で、県民一人当たりでは約60万3千円にもなります。それで国を先頭に行財政改革が取り組まれています。沖縄県が発表した県財政の中期見通し試算結果によると、4年間の収支不足額は、1,260億円余の歳入落ち込みが明らかにされています。その結果、県は行財政改革を強力に進め、組織の改変と人員の削減、民間委託をどんどん進めています。今や如何に行政の無駄を省くかが大きな課題になっています。

その中で、最大の無駄が泡瀬干潟の埋め立て事業であることがますます明らかになってきました。現在までの県の中城湾港土地造成事業は、土地の処分が進まず、財政的にも「塩漬け」と総務部長が説明するほど、無駄な公共工事であることがいよいよ明確になってきました。

宮古島市では観光関連施設用地として埋め立てたトウリバー地区の土地の処分がいまだに売却の目途の立たず、市の財政を大きく圧迫しています。

中城湾港特別自由貿易地域も企業誘致のための土地売却はなかなか進まず、現在、わずかに2.1%(特別FTZ用地)しか売却されていません。賃貸工場も入居企業少なく家賃を安くせざるを得ない事態になっています。その結果、家賃軽減が満床ベースで年間1700万円、3年間で32100万円となります。また、土地も安くせざるを得なくなり、その分譲割引額は平成19年度から4年間で47億の軽減にもなります。これはその分県民が損失を被ったことになります。このように特別自由貿易地域の事業計画の破綻はますます明らかになってきています。

この特別自由貿易地域のために大型船の入港を可能にするため航路の浚渫を行い、その浚渫土砂で泡瀬干潟の埋め立てをやるという事態、現実を無視した無謀な計画であります。この埋め立て問題では県の総務部長も「規模の縮小」を含めて見直す必要がると発言もしています

しかも、米軍再編が進められる中で、民間港湾を米軍が強制使用も求める動きが石垣市などであるという報道に見られるように、中城湾港もホワイトビーチと直結しているだけに軍事利用の恐れも指摘されています。

以上、述べましたように、私は自然破壊であると同時に採算性無視の税金の無駄遣いである泡瀬干潟の埋め立て事業は直ちに中止すべきであると申し上げて陳述を終わります。