平成17年(行ウ)第7・8号 泡瀬干潟埋立公金支出差止等請求事件

原告 小橋川共男 外

被告 沖縄県知事・沖縄市長

準 備 書 面(15)

平成19年3月14日

那覇地方裁判所 民事第1部合議係 御中

原告ら訴訟代理人

                     弁護士 原 田 彰 好

                     弁護士 籠 橋 隆 明

                     弁護士 御子柴   慎

                     弁護士 長谷川 鉱 治

                     弁護士 白 川 秀 之

                     弁護士 間 宮 静 香

                     弁護士 栗 山   知

                     弁護士 金邑@口   崇

                     弁護士 堀   雅 博

 

 本準備書面では、環境影響評価書に記載されているクビレミドロに対する環境保全措置が極めて杜撰なものであることについての主張を補充する。 

 

1 クビレミドロの移植について

(1)クビレミドロは、「植物版レッドリスト、植物U:藻類レッドリスト」(平成9年8月、環境庁(現:環境省))において絶滅危惧T類、「日本の希少な野生水生生物に関するデータブック」(平成10年、水産庁)において絶滅危惧種、「沖縄県の絶滅のおそれのある野生生物(レッドデータおきなわ)」(平成8年3月、沖縄県)において絶滅危惧種に指定されている極めて貴重な植物である。

(2)クビレミドロの移植については、原告準備書面(8)において、「移植先の環境が前述したクビレミドロ生育状況を満たし、泡瀬地区のクビレミドロの大量移植が、工事以前の状況まで回復することが本当に可能なのかどうかの結果は得られておらず、移植技術は確立されているとは到底言えない。

そして、少なくとも、移植が本当に可能であると言えるには、数年間にわたり安定的に再生産が行われているかについての継続的な観察や検討を行い、クビレミドロが自力で持続的に維持されていると言う結果が得られることが必要である。」と、現時点においてすら移植技術が確立されていないことを述べてきた。

(3)これに対し、被告沖縄県は「事業者は環境影響評価時に移植が技術的に可能であると判断している。そして、不確実性を有することから「専門家の指導・助言を受けつつ移植を中心とした(中略)措置を講じる」(甲8号証P6−8)としている。

   そして、平成13年度から実施している事業者の移植実験により、クビレミドロが生育していない勝連地区に卵が産まれる砂を移植しているところ、移植結果は、平成14年冬、同15年冬及び同16年冬の生育が確認されており、複数年の再生産が可能であることを既に確認している。」旨主張をしている(被告沖縄県準備書面(6)「第2、5、(2)、エ」)。

   しかし、被告沖縄県の主張にある「事業者は環境影響評価時に移植が技術的に可能であると判断している」との事実は、非科学的な根拠に基づく判断であり、環境影響評価法が要求する水準に達する「移植試験」が実施されたなどと評価できるものではない可能性が極めて高い。

2 クビレミドロに関する「移植試験」が杜撰なものであること可能性が極めて高いことについて

(1)クビレミドロが環境影響評価書(以下「アセス書」という。)に記載された経過

以下、アセス書と「中城湾港泡瀬地区環境監視・検討委員会、平成13年2月28日、資料―2、3ページ」に基づき、クビレミドロがアセス書に記載されることとなった経過の概略を示す。

@ 本件中城湾(泡瀬地区)公有水面埋立事業に関する「環境影響評価準備書」は、平成11年3月〜5月にかけて送付、広告、縦覧された。

当該準備書には埋立予定地内にクビレミドロが生息していることについては記載がされていなかった。

平成11年10月12日、沖縄県知事意見でクビレミドロの生息・生育調査の必要性が指摘された。(甲8:アセス書、10-16

A「環境影響評価書(補正前)」の作成、送付が平成11年11月に行われた。

これに対し、平成12年2月23日、中城湾港港湾管理者の長である沖縄県知事から「クビレミドロの確認調査を行い、専門家等の指導・助言を得て、その対処について、環境影響評価書に記載されたい」との意見が出された。(甲8:アセス書、11-2

B 沖縄総合事務局は、クビレミドロについて、平成11年12月22日に1回目の調査を行ったが、その際クビレミドロを確認することはできなかったとされている。その後、平成12年1月20日、21日に2回目、2月21日に3回目の調査を行ったところ、埋立予定地内でクビレミドロを確認したとされている(甲8:アセス書、6-6)。

C 「環境影響評価書(補正後)」の送付、広告、縦覧が平成12年3月〜4月にかけて行われた。

    ここで初めて、クビレミドロの環境保全措置として、「移植試験を実施した結果、技術的にも移植することが可能であると判断される(アセス書、6-8)」、との事業者の見解が示された。

(2)しかし、アセス書では、事業者からは、アセス書に示される「移植試験」とはどのような試験であって、当該試験においてどのようなデータが得られ、「技術的にも移植することが可能である」との結論に至ったかの判断の過程は全く示されていない。

前述したように、事業者が埋立予定地でクビレミドロを確認したのは平成12年1月20日21日、2月21日の調査によってであり、「環境影響評価書(補正後)」の送付、広告、縦覧は同年3月から始まっているのである。

その間(121日〜31日)僅か約38日程度の期間しか存しないのであり、そのようなわずかな期間に「移植試験」が行われ、その結果をもとに、科学的な見地に基づく考察を行い、「移植試験を実施した結果、技術的にも移植することが可能である」(甲8:アセス書、6-8)」との判断をすることができるのか極めて疑わしいところである。

(3)以上の時系列の整理をしただけも、事業者がアセス書に記載するクビレミドロに関し実施したとされる「移植試験」なるものが杜撰なものである可能性が極めて高いことが容易に推察されるところである。

(4)なお、本件埋立につき免許・承認(平成12年12月19日付)がなされた後に設置された「中城湾港泡瀬地区環境監視・検討委員会(平成13年2月28日設立、以下、監視検討委員会」において提出された資料にも、事業者が実施したとされる移植試験の内容及び事業者が技術的にも移植することが可能であるとの判断に至った基となる移植試験の結果についてのデータの記載は皆無である。

参考までに、クビレミドロの移植試験に関する資料が初めて提出された平成13年6月11日開催の監視・検討委員会の資料を以下に引用する(監視検討委員会、資料―1、33ページ)。

当該表の中で、クビレミドロの確認(平成12年1月)からアセス書(補正後)の送付、広告、縦覧(平成12年3月)までの期間に実施されたものとして該当する実験は、表の2段目にある「藻体の移植後追跡調査」である。

しかし、当該実験に関する移植時期は平成12年2月24日25日に実施されており、追跡調査の実施時期についても平成12年12月〜平成13年3月からとされている。

したがって、上記実験が、アセス書に記載のある、事業者が実施したとされる「移植試験」には該当しないことは明白である。

3 求釈明事項

  被告沖縄県に対し、以下の点について釈明を求める。

(1)アセス書に記載されている事業者が実施したとされるクビレミドロの「移植試験」の実施期間を明らかにされたい。

(2)上記「移植試験」とはどのような試験であったのかを明らかにされたい。

(3)上記「移植試験」によって得られたデータを明らかにされたい。

(4)上記「移植試験」によって得られたデータについて、科学的な分析をし、「技術的にも移植することが可能である」との判断に至った判断の過程を示した報告書等の資料を提出されたい。

以上

証拠書類

1.「中城湾港(泡瀬地区)公有水面埋立事業に係る環境影響評価書」(平成123月、沖縄総合事務局)

2.中城湾港泡瀬地区環境監視・検討委員会、平成13年2月28日、資料―2、3

3.中城湾港泡瀬地区環境監視・検討委員会、平成13611日、資料―1、33

以上