「世界の宝、泡瀬干潟を守り生かそう!! シンポジウムとコンサート」

アピール

 

去った730日、「東部海浜開発事業検討会議」から東門沖縄市長に報告書が提出された。この事業が、「中部圏経済の活性化に資するものか?」「泡瀬干潟の多様な自然環境の保全と両立しうるか?」の二点が主な論点になっている。ほとんどの委員の意見が、この事業に疑問を呈しており、工事を「中断」してこの事業を検討していくべきだという委員も複数いる。東門市長は、この報告をもとに「早い時期に事業の是非を判断したい」としている。沖縄市の強い要請で行われたこの事業も、検討会議の報告のように、大きく変化しているのに、81日、「海上工事再開」がなされた。私たちは事業再開に強く抗議する。

さて、私たちは、泡瀬干潟埋立(東部海浜開発)事業が大きな岐路に立っている今、このシンポジウムとコンサートを開催した。

沖縄大学学長の桜井国俊先生は「基調講演」で、日本の「環境アセスメント」の矛盾点を指摘している。環境アセスメントの目的は、経済的メリットと環境低下のデメリットを明確にして、意思決定の判断材料を提供することですが、日本では、アセスが出れば、そのまま事業の認可に繋がっているということで、環境を知らないものが環境を保全しながら事業を進めるという根本的な矛盾がある。事業による環境破壊を未然に防ぐ手段としてアセスは、一定程度有効ではあるが、事業の必要性を判断する作業が不可欠で、それは市民に委ねられている、という報告をいただいた。

シンポジウムでは、小橋川共男(泡瀬干潟を守る連絡会)さんから、地域の宝を再発見することが街の活性化に繋がるとの提言があった。泡瀬干潟とその浅海域には世界に発信できる自然環境があり、健康な心身を養うような賢明な活用方法を求めることに、沖縄市の活性化を見出しうる方向性を示している。安部真理子(沖縄リーフチェック研究会)さんは、泡瀬の二箇所のサンゴ定点調査によって、美しかったサンゴ群落が、土砂で窒息して死にかかっている現状を報告した。珊瑚の悲鳴が聞こえてくるようだ。

伊波義安(琉球諸島を世界遺産にする連絡会)さんからは、豊かな生物生産性と多様性を持つ泡瀬干潟の埋め立てが強行されれば、琉球諸島の世界遺産への登録は難しくなる、琉球諸島全体の自然を護り、次世代に継承することこそ我々の責務だ、という提言をいただいた。伊藤よしの(日本湿地ネットワーク)さんは、和白干潟と藤前干潟の例を挙げ、類似の事業が行われた和白干潟の教訓から、泡瀬干潟埋め立て事業を中止して、ラムサール条約に登録し、国際的に重要の湿地としての自然の恵みを活かした街づくりを提言した。原田彰好(自然の権利基金)弁護士は、泡瀬干潟埋立をめぐる住民訴訟を通して、この事業の不当性が明らかになっていること、沖縄市最大の宝物である泡瀬干潟の保全を決定し、埋め立てを中止することを要求している。開発法子(日本自然保護協会)さんは、干潟を利用した持続可能な街「エコタウン泡瀬」をイメージして、真に市民の暮らしを豊かにする「東部海浜開発事業」とするための提言を行っている。花輪伸一(WWFジャパン)さんは、環境保護についての考え方が、80年代と現在では大きく変化したとして、泡瀬干潟を含めた中城湾と湾岸全体の保全と開発に関する総合計画の策定を提言して、「プラン」が策定されるまで、埋立はモラトリアム(猶予、延期)とすることを要求している。

また、この「シンポジウムとコンサート」では、県内で活躍するミュージシャン、知名定男さん、鳩間可奈子さん、海勢頭豊さん、島田路沙さん、知念良吉さん、も参加していただき、自然保護の大切さ、泡瀬干潟を守ることの大事さを、音楽を通して訴えていただいた。

私たちは、このシンポとコンサートを通して、泡瀬干潟の自然環境の重要性を改めて認識した。また、沖縄市の街づくりについても様々な提案がなされた。「自然を守りたい」「街を活性化したい」という点では事業推進派も、反対派も一致している。私たちは、推進派も反対派も含めた円卓会議と新たな検討会議を設立して、次世代に希望を残せる沖縄市の「街づくり」について話し合う機会を持ち、大いに議論を深めていくことを求める。そのためにも「街づくり」のプラン策定まで、埋立工事の「中断」を強く要求するものである。

最後に、東門沖縄市長に提言したい。市長は「埋立事業の情報を精査するために、検討委員会を立ち上げ、その意見をもとに事業の是非を判断する」を公約してきた。30日の「東部海浜開発事業検討会議」の報告は、手法が違っていても、推進派と反対派との共通点として、@自然を守りたい気持ちはベースとしてある、A対立が続くことのデメリットを認識している、B沖縄市の現状を改善し、活性化を願っている、C話し合いをもつ必要性を認識している、の四点を挙げている。

いよいよ市長の判断が迫られている。検討会議の意見を踏まえ、沖縄市として事業の見直しをする上でも、事業者(国・県)に埋立工事の一時中断を要請すべきである。そして、この埋立事業の「中止」を展望すべきである。私たちは、東門市長の英断を期待し、この「シンポジウムとコンサート」のアピールとする。

 

20078月3日

「世界の宝、泡瀬干潟を守り生かそう!!シンポジウムとコンサート」