内閣府ヒヤリングの報告・・「沖縄市の推計は統計学的なレベルまで達していない」

 

報告者:前川盛治(泡瀬干潟を守る連絡会・事務局長)

 

赤嶺政賢・日本共産党衆議院議員が1224日に内閣府・沖縄振興局参事官・中野則夫氏らから、沖縄市東部海浜開発事業の新沖縄市案についてヒヤリングを行った。あらかじめ提出した14の質問に答え、質疑応答を行った。

その中の一つに、「沖縄市の観光客の推計が統計学的に正しいのか」という質疑に対する回答があった。以下速報である。全体については、後日報告する。なお、沖縄市の推計については、文末に掲載してあります。

 

中野参事官の回答(一部)

 

              この件に関しては、専門家の意見を聞いていない。

              沖縄市の推計の仕方は、統計学的なレベルまで達していないかもしれないが、一つの指標になるようなものじゃないかと、私たちはとらえている。

              県の統計から沖縄市入域観光客数を知る直接的なものがない(実績の積み上げが無い)ので、沖縄市は二つの方法で推計している。

              東南植物楽園7.9%から推計すると67万人程度になるので、沖縄市入域観光客数の推計68万人は堅めの推計である。

 

以上の回答に示されるように、国は、沖縄市案を手堅く検証して承認したのではなく、沖縄市案をそのまま鵜呑みにして承認し、埋立を表明してきた。

 

前原大臣(当時)、内閣府、沖縄県の責任が厳しく問われる。統計学的なレベルに達していないかもしれない推計値を基礎に様々な需要予測をしている沖縄市案の合理性の無さは、明らかである。東南植物楽園を例にした推計も誤りである(これについては文末に反論資料)。このようなデタラメな案で、世界に誇る生物多様性の宝庫・泡瀬干潟が埋められることを許してはいけない。

 

沖縄市民・県民、国民の皆様!!

このようなあまりにも理不尽な民主党政権の態度をそのまま許してはいけない。抗議の声をあげよう。

 

このヒヤリングに参加した方々(敬称略)

 

内閣府側:沖縄振興局参事官・中野則夫、沖縄振興局参事官補佐・大野靖、参事官付専門職・照屋雅彦

赤嶺政賢側:日本共産党衆議院議員・赤嶺政賢、日本共産党沖縄県議・嘉陽宗儀、日本共産党沖縄県議・渡久地修、日本共産党沖縄県議団書紀・天久笑、WWFJ・花輪伸一、日本自然保護協会・開発法子、泡瀬干潟を守る東京連絡会・羽生洋三、泡瀬干潟を守る東京連絡会・松元裕之、泡瀬干潟を守る連絡会・事務局長・前川盛治

 

以下は、沖縄市の推計が統計学的に誤りであることを示す、泡瀬干潟を守る連絡会の見解である。

 

沖縄市案の推計「入域観光客数」は、統計学の分からない人の数字遊びであり、その推計は幼稚なペテン・トリックである。沖縄市案の重要な部分は「観光リゾート」であるから、この推計が誤りであれば、沖縄市案の経済的合理性の無さはあまりにも明白である。

 

             20101214日 泡瀬干潟を守る連絡会

 

沖縄市案で使われたH162004)年度の県調査は、77箇所の観光地から訪問した場所を全て選ぶ(複数選択)ものである。その調査票とデータは下記である。

 

(平成16年度観光統計実態調査、平成17年3月、沖縄県観光リゾート局)

 

 

 

沖縄市(コザ)を訪問した人は、全体514.3%の中の7.4%である。

東南植物楽園を訪問した人は、7.9%である。

 

このデータはただそれだけを示すものであり、このデータを使った沖縄市が推計した計算式は成り立たない。下記は沖縄市の推計である。

 

新沖縄市案、付属資料、「主な需要予測の考え方 @入域観光客数

  平成22730

 

沖縄市の推計の計算式@⇒県データから「中部東海岸入域観光客の沖縄市立寄率」を計算する。 

計算式:15.3÷25.1×10061% ⇒この値は中部東海岸入域観光客の沖縄市立寄率ではない。25.1の数値の中の15.3の割合を示しているだけ。

分母25.1%(東南植物楽園7.9%+沖縄市(コザ)7.4%+伊計島5.3%+勝連城跡2.4%+中城城跡2.1%)=中部東海岸観光客数

分子15.3%(東南植物楽園7.9%+沖縄市(コザ)7.4%)=沖縄市観光客数

 

沖縄市の推計の計算式A⇒県データから「中部地域入域観光客の沖縄市立寄率」を計算する。 

計算式:15.3÷79.8×10019.2% ⇒この値は中部地域観光客の沖縄市立寄率ではない。79.8の数値の中の15.3の割合を示しているだけ。

分母79.8%(東南植物楽園7.9%+沖縄市(コザ)7.4%+伊計島5.3%+勝連城跡2.4%+中城城跡2.1%+北谷アメリカビレッジ16.5%+琉球村13.6%+残波岬10%+ムーンビーチ4.3%+座喜味城跡3.7%+むら咲むら3.7%+コンベンションセンター2.9%)=中部地域観光客数

分子15.3%(東南植物楽園7.9%+沖縄市(コザ)7.4%)=沖縄市観光客数

 

沖縄市の計算式は、複数回答の数値を足したり、割ったりして同じ人が重複して計算されたりしている。

この計算式で、立寄率を計算するのであれば、重複部分を調べ除かなければならない。沖縄市は、複数選択のデータをそのまま使っており、この式は成り立たない。

上記の計算式は成り立たない(間違いである)が、もし、この計算式が成り立つとすれば、同じ資料をもとに県入域観光客数(全体)から沖縄市入域観光客(東南植物楽園+沖縄市コザ)の割合が計算できることになる。

分母:514.3(全体)、分子:15.3(東南植物楽園+沖縄市コザ)、15.3÷514.3×1003

平成30年の県観光客数沖縄市推計850×0.03(沖縄市立寄率)=26万人。

H30年度の沖縄市入域観光客は26万人となり、沖縄市の68万とは大きな差がでる。この二つの推計は、どちらも間違いである。

 

補足

 

中野参事官は、東南植物楽園7.9%(これを使うとH30年度沖縄市入域観光客数は67万人であり、沖縄市の推計68万人に近い)を参考に、沖縄市の推計が堅めであることを発言しているが、その誤りを指摘しておく。

 

1. 中野参事官は、回答でも発言しているように、一つのデータで沖縄市入域観光客数は推定できない。

2. このデータはH16年度のものであり古い。現在あるいはH30年度の推計には使えない。現に、東南植物楽園は下記の新聞報道にあるように観光客数の落ち込みにより「一時閉園」に追い込まれている。

3. 沖縄市(コザ)7.4%も同じように、沖縄市(コザ)訪問者は、イコール沖縄市入域観光客ではない。だから、沖縄市はこの数値を使っていない。また、このデータもH16年のデータであり古い。これをH30年の予測にそのままは使えない。