09年7月23日の海藻草類専門部会
「クビレミドロの移植が技術的に可能であることが実証されている」という見解は、海藻草類専門部会の見解ではなく、事業者(国・県)の独断である、ことが明らか。
1.
新聞報道(「琉球新報」7月25日)
この記事の中に、(4段目)「前川盛治委員は部会の見解を表明すべきだと書面で提起した。部会として≪移植が技術的に可能≫との見解は示さなかった」、という部分がありますが、分かりにくいので、説明します。
2.09年7月23日の海藻草類専門部会は泡瀬干潟裁判・控訴審と重なったため、委員である私(前川盛治・泡瀬干潟を守る連絡会・事務局長)は参加できず、意見を文書で提出しました。この部分の意見は下記の通りです。
【これまで、当部会において、事業者(国・県)は、クビレミドロの移植に関し、「屋慶名地区や勝連地区への移植実験を行った結果、複数年にわたる再生産を確認し、移植が技術的に可能であることが実証されています。」としています。
しかし、当部会では、「クビレミドロの移植が技術的に可能であることが実証されている」ことは、まだ確認・了承もしていない。この件に関しては、先の部会でも私が意見を述べた。
沖縄県は、09年7月8日に行われた「(控訴審)現地進行協議」でも、「クビレミドロの移植が技術的に可能であることが実証されている」(現地進行協議資料15ページ)と説明している。
事業者の「クビレミドロの移植が技術的に可能であることが実証されている」の表明にたいしての当部会の見解を表明すべきです。】
2.
新聞報道では、「部会として≪移植が技術的に可能≫との見解は示さなかった」とありますから、≪移植が技術的に可能≫の見解は、事業者(国・県)の独断であることがはっきりしました。
3.
このことは、泡瀬干潟裁判での争点の一つです。事業者(国・県)は専門家の指導助言を得ずに「クビレミドロの移植は技術的に可能・実証されている」という見解を独断で表明してきたことになります。
※私が提出した意見(全文)は下記です。資料がないと理解できませんので、後日、詳細を紹介します。
平成21年度 中城湾港泡瀬地区環境保全・創造検討委員会
第1回 海藻草類専門部会(平成21年7月23日)
意見 委員:前川盛治(泡瀬干潟を守る連絡会・事務局長)
海藻草類専門部会に都合(泡瀬干潟埋立公金支出差止等請求控訴事件の控訴審)により出席できませんので、文書で意見を述べます。意見についてはどのように対応されたのか文書で示していただくようにお願いいたします。
議事Aに関連して
1.
前回部会で「自然藻場の保全についての捉え方が委員によって異なっていた」ため、保全・創造検討委員会で「自然藻場の保全の考え方」を審議し、その考え方を「海藻草類専門部会」に押し付けている。このやり方は、納得できない。前回部会では、次回さらに審議することになっていた。専門部会で審議を尽くして決定していくべきであり、「上意下達」のやり方は専門部会に馴染まない。
2.
この事業における「藻場生態系の保全」は、アセス書では「被度50%以上の藻場を25ha移植し、藻場生態系の保全に努める」だけが提起されており、今提起されている「海藻草類の生育環境の保全・創出(旧・海藻草類の新たな生育場の創出)」は、「(アセス書の)移植による保全」が出来なかったことによる新たな問題提起である。そうであるからこそ、この専門部会での徹底した論議が必要であった。
3.
具体案Bが提起されているが、私は反対である。以下その理由を述べる。
A.
低天端堤での実証実験の結果、事業者は「導入海草が維持される生育場を創造できる」としているが、私は、大きな台風は1度来襲しただけであり、最低でも5,6年は経過を見るべきであり、結論は拙速だと意見を述べてきた。
B.
低天端堤で導入された海草は現在も維持されているといいながら、今度の提案では、その低天端堤を撤去し、具体案Bで使うとしている。低天端堤対照実験で200uの海草を消滅させ、低天端堤の撤去で「維持されている海草」400uが消滅する。「海藻草類の生育環境の保全・創出」をいいながら、海草藻場を破壊しようとしている。
また、今回提案されている場所が「適地」であるならば、低天端堤の実証実験も候補地Bで行うべきであり、場所を次々変更していくやり方は「海上工事を創出している」、泡瀬干潟・海域を海上工事実験場にしており、環境破壊である。
A.
事業者も認めている通り、泡瀬干潟・海域では、海草藻場が極減しており、その原因を解明し、対策を講じるのが先である。大幅な海草藻場の減少(被度50%以上の大型海草藻場が事業前・平成13年度は56.8haあったが、現在はゼロ)や、被度50%以下の海草藻場79haの埋立(1区・2区全体)に眼をつぶり、0.5haの藻場創出(成功するかどうか分からない)で責任逃れをしようとしていることは納得できない。
また、移植で25haの海草藻場を保全するといいながら、結果的にそれが出来ず、残り24haも被度が50%以下になったので、移植しないで生埋めになることの反省も明確にすべきである。
B.
候補地Cについて、「当面実施できない、工事の進捗に応じて検討を再開」としているが、この場所は、事業者の資料でも明らかなように、平成13年頃は、被度50%を超える海草藻場だったが、工事の影響で潮流が変化し、砂礫海底から砂が流出して海草藻場が減少しているところである。
このような場所の海草藻場減少を解明し、対策を講じるのが先決である。なお、ここの海草藻場の創出手法として「砂を補充」などが示されているが、潮流の変化で砂が流出しているのに「砂の補充」は理解できない。工事が終わって「防波堤が出来た後」では遅いのである。
議事Bに関連して
1.生育被度(全体被度)の変化の記述(資料―3、5ページ)で「移植藻場の被度は自然藻場の被度と同様の変化傾向を示している」となっているが、図1.2.5のグラフをみると、H20.8からH21.1の変化については、自然藻場は横ばいか低下であるが、移植藻場は2倍に増加している。この記述はそれでいいのか。
2.手植え移植藻場評価について、「評価の方針」「評価方法」「評価指標」が示されているが意見をのべる。
A.評価の方針
この部会の設置は、アセス書の事後調査(アセス書、7−1)に基づいている。工事の実施に係る事後調査(表7.1.2)によれば、監視項目、監視基準は、次のように記載されている。
|
移植先の海草、藻場 |
監視項目 |
移植先における海草の活着状況及び生育被度、移植先の藻場における生物の出現状況 |
監視基準 |
移植時と比較して海草の生育被度が高くなっており、藻場に多くの生物が出現していること |
評価の方針に、アセス書の事後調査の監視項目、監視基準を明確に記載すべきである。平成14年12月の評価の際にも、私はそのことを強く指摘し、そのことが記載された。
今回の評価の際にも、そのことを明記すべきである。
B.評価指標の「被度」「面積」については、「目視」と「詳細観測枠」のデータの差が大きすぎることから、私は、これまで疑問を表明してきたが、中間評価に当たっては、正確を期すこと。
3.これまで、当部会において、事業者(国・県)は、クビレミドロの移植に関し、「屋慶名地区や勝連地区への移植実験を行った結果、複数年にわたる再生産を確認し、移植が技術的に可能であることが実証されています。」としています。
しかし、当部会では、「クビレミドロの移植が技術的に可能であることが実証されている」ことは、まだ確認・了承もしていない。この件に関しては、先の部会でも私が意見を述べた。
沖縄県は、09年7月8日に行われた「(控訴審)現地進行協議」でも、「クビレミドロ
の移植が技術的に可能であることが実証されている」(現地進行協議資料15ページ)と説明している。
事業者の「クビレミドロの移植が技術的に可能であることが実証されている」の表明
にたいしての当部会の見解を表明すべきです。
4.資料―3、30ページ、9行目で「St.Bでは、降雨時に陸域からシルトが流入」とあるが、「市街地の陸域」なのか「埋立地の陸域」なのか、分からない。「埋立地の陸域」と思うが、はっきりさせるべき。
議事Cに関連して
1.送られた資料に、「移植対象藻場について」はありません。意見が言えません。
議事であれば、事前に資料を送付すべきです。