2007年1月29日
沖縄総合事務局 局長 竹林義久 様
開発建設部長 様
那覇港湾・空港整備事務所長 三宅光一 様
港湾空港指導官 成瀬英治 様
港湾計画課長 阿野貴史 様
泡瀬干潟を守る連絡会
共同代表 小橋川共男 漆谷克秀
泡瀬埋立、海上工事の汚濁防止膜の抜本的な改善、工事の中断を求める要請
連絡会は、2007年1月2日に撮影された汚濁防止膜の状況、浚渫工事現場のシルトの
堆積情況のビデオを入手しました。詳細は、別紙記者会見資料の通りです。
それを見ると、汚濁防止膜は、@ところどころ切れている、A繫ぎ目が空いてる、B
底の方が巻上げられていて海底に着いていない、C底のほうが切れて、海底に着いてい
ない、等、石材投入の際に発生するシルトを海底に堆積させ、拡散を防ぐ役割りを果た
していません。
事業者は2重に汚濁防止膜を展張してあり、護岸工事の石材投入による海洋汚染を防
いでいるといっていますが、実情は写真の通りで、膜が防止の役割りをはたしていませ
ん。
この場所は私たちが西のホットスポットと呼ぶ海域です。そこは、新種のホソウミヒルモ、リュウキュウズ
タ、深場のコアマモ、泡瀬で絶滅したといわれるスイショウガイ、スギノキミドリイシ・リュウキュウキッカサンゴ・ハナ
ガサミドリイシ等のサンゴが生息する場所です。貴重な種がこの工事で消滅しようとしていま
す。
汚濁防止膜の杜撰さは過去にも例があり、私たちはそれを指摘してきましたが、改善
が見られません。
事業者は、この件がマスコミに報道された日(1月24日、琉球新報朝刊、沖縄タイムス夕
刊)に急遽、調査をし、補修したとして記者会見し、そのことがマスコミで報道(1月
24日琉球新報、26日琉球新報)されています。報道を見ると、「24日、工事を中断し点
検し、7ヶ所で補修を行った(25日新報)」、「25日、前日に引き続き点検し18ケ所を補
修した(26日新報)」、「膜は干潮の時、地面に掛かり破れるケース多く毎日1ケ所から
十ヵ所の補修をしている(25日新報)」等となっています。このような破損しやすい汚濁
防止膜の情況で、海洋汚濁・汚染が防げるのか、根本的な改善が求められます。
また、埋立工事東側の航路浚渫場所は、シルトがヘドロ状に堆積しています。このヘ
ドロ状のシルトは汚濁防止膜で今の区域にとどまっていますが、膜が撤去されたら(工
事は4月〜7月に一応中断されますから、膜は撤去されます)泡瀬海域に広がり海洋が濁
り、汚染されます。
この場所は私たちが東のホットスポットと呼ぶ場所です。新種の可能性のあるニライカナイゴウナが
発見された場所であり、トウカイタママキ、フジイロハマグリなどの絶滅危惧種が生息する場所です。
また、普通は深場でしか見られないウミエラ(サンゴの仲間)もここで見られます。この場所
の浚渫で、貴重種や絶滅危惧種の貝等は余水吐け護岸の埋立地で死骸になって積み上げ
られていると思われます。
浚渫で海域は濁り、汚染されます。昨年はそのために、この近海のモズクは生育せず、
モズクはほとんど採れませんでした。今年も、この付近ではモズクは採れないでしょう。
浚渫の始まる前までは、天然のモズクが豊富に採れた所です。
このように汚濁防止膜は、工事期間中、シルトを一時的にとどめておくだけであり、海洋
汚濁・汚染を防ぐものではありません。「汚濁防止膜を2重に張って周辺海域を保護して
いる」、ということは一時しのぎです。
昨年、浚渫場所の南側の汚濁防止膜は工事を中断していた期間(4月〜7月)も撤去さ
れず、展張されたままでした。汚濁を少しでも防ごうとしましたが、3方は撤去されてい
ますから、効果はありませんでした。周辺海域は、潜ったら何も見えないほど、濁って
いました。
事業者は濁りの定点調査地点(St.a〜d、St.H、Gの6箇所)、工事期間中の濁り
監視地点(St.8〜17、10地点)で調査していますが、その地点は「浚渫工事現場か
らかなり離れた地点」であり、浚渫による濁りを正確に把握できるか疑問です。この件
に関しては、06年8月4日の「汚濁防止膜破損による海域の汚染についての要請」でも
指摘し改善を求めました。
このように、現在施工されている海上工事(貴重種の保全措置が行われていない工事、
シルトを堆積させる浚渫のあり方、破損しやすい汚濁防止膜の情況)では、海洋汚濁・
汚染は防止できないと思われます。以下の要請をします。真摯な対応を求めます。
要請
1.
汚濁防止膜の破損情況、浚渫場所の情況を写真等で公表すること。
2.
汚濁防止膜を「補修した」としているが、補修した現場を、マスコミ、連絡会も
一緒に検証させること。
3.
「破れ易い」汚濁防止膜を抜本的に改善すること、その間、工事を「中断」する
こと。
4.
海上工事期間中の現場の調査(月2回程度、事業者・連絡会合同)を行うこと。
(06年8月4日にも浚渫場所の合同調査を要請したが、実現していない。)
5.
シルトが堆積し、後にそれが拡散する今の浚渫工事を抜本的に改善すること。
6.
「濁り調査地点」を、浚渫工事現場近くに設定すること。
7.
浚渫工事現場、護岸工事現場の「貴重種保全措置」が講じられていない。保全策
を示すまで工事を「中断」すること。
《参考》
新種・貴重種に対する事業者の見解:工事中に天然記念物指定種や「レッドデータブッ
ク」、「レッドリスト」等の掲載種、その他貴重種・重要種に相当する種で、環境影響評
価書に記載されている動植物種以外の種の存在が埋立てに関する工事の施工区域内若し
くはその近傍で確認された場合には、関係機関へ報告するとともに十分調整を図り、そ
の保全に必要な措置を適切に講じます。 以上
《要請に対する回答》
総合事務局交渉参加者
那覇港湾・空港整備事務所長 三宅光一 様 港湾空港指導官 成瀬英治 様
港湾計画課長 阿野貴史 様
環境管理官 与那覇健次 様 係長 早川哲史 様
(以下の回答内容は、前川メモです。事前にFAXで要請文(案)は送付してありましたが、回答は、私たちの要請は受け入れられないという内容であり、事業者の「環境への配慮のなさ、事業ありき」の態度を示すものでした。)
回答の前に成瀬指導官から、工事期間中の工事現場への立ち入りについての注意(危険なので立ち入り禁止、許可をえて入るように等)があった。後の回答にもある通り、合同調査や点検のための検証も出来ないとしながら、「許可を得て入るように」とは、全く矛盾する態度です。
工事期間中は、「連絡会」など、外部の調査はできないということになっては、大きな問題です。
要請についての回答は主に三宅所長が行った。回答の前に、この事業については、施工業者や作業員に環境への配慮については特に注意するように指示しているし工事関係者もそれをふまえて工事を行っているとの説明があった。
しかし、古タイヤが石材と一緒に投棄されていたり、破れ易い防止膜を使ったり、防止膜が破損したり、防止膜を毎日点検・補修したり、シルトが堆積しそれが周辺海域を汚濁している情況を見ると、「環境への配慮」が言葉だけであり、実情とはかけ離れたものであることは明らかです。三宅所長は、この事業は「世界一環境に配慮した工事である」などと言っていますが、聞いて呆れます。後でトーンダウンして「日本一」だなどとしていましたが、私たちが写真で示した実態(記者会見資料)を見れば、それが「嘘」であることは明らかです。アセスで約束した貴重種の保全をしない(新種・貴重種生埋め)ことや、現場を「検証させない」「合同調査も拒否をする」など、外部に公表できない態度を見れば、「世界一、日本一」を言葉に出すこと自体おかしなことです。
1への回答:マスコミ等へは記者会見で内容を報告した。干潮時に浅瀬部分に倒れる、石材部分に倒れるなどのために破損する。破損した部分については、工事開始前には毎日点検・補修をしている。そのデータについては、あるかどうかを確認し、あれば連絡会に提供する、と回答。連絡会は、工事開始から、工事が終わるまでの全てのデータの提出を求めた。
2への回答:事業者が責任を持って補修している。一緒の検証は出来ない。
連絡会は、ちゃんと補修したのであれば、検証できるのではないか、検証できないのは、見せたくない事情があるのではないか、と指摘した。
3への回答:昨年10月に敷設してから約3〜4ヶ月を経過しており、劣化が見られ、破損箇所はあるが、事業者の責任で補修している。工事の中断は出来ない。連絡会は、破損しやすい防止膜を使っている、破損しやすい工法が問題だ、として抜本的な改善を強く要請した。
4への回答:工事期間中の合同調査は出来ない。
連絡会は、昨年から合同調査を要請しているが実現できていない、合同調査できないことは大きな問題である、と指摘した。
5への回答:汚濁防止膜を撤去する際、膜の周辺のシルトはなるべく吸い上げて固化剤を混ぜ処理している。工事による濁り発生は無い。
連絡会は、浚渫場所に主に堆積しているシルトについてはどうなっているのか、どれぐらいの量を固化しているのかのデータの提供を求めた。それに対し、データがあるかどうか確認して回答する、と答えた。連絡会は、ほとんどのシルトは防止膜撤去後周辺に拡散しており、工事による濁りはあることを指摘し、連絡会として独自に調査して事実を示したいと反論した。
6への回答:調査地点は環境監視委員会にも報告し了解を得ている。通常の監視地点を増やすことは検討している。
連絡会は、工事現場近くでの調査地点の設置を再度強く要請した。
7への回答:県に報告している。出来るだけの保全をしている。
回答に対して、連絡会が、「事業者見解に基づき保全措置を適切に講じる」となっていると指摘したのに対し、「絶滅危惧TA類に対して保全措置を講じている」と再び回答したが、事業者見解は「絶滅危惧TA類だけを保全する」とはなっていない、「アセス書に記載されていない貴重種・絶滅危惧種が確認されたら保全措置を講じる」とあることを指摘し、アセスの履行を再度強く求めた。また、浚渫現場周辺に生息している「ウミエラ」についても、事業者は「泡瀬以外にも生息している、浚渫場所周辺のウミエラは保全対象ではない」といっていますが、その事実を示す資料(他の海域での生息状況)を示すべきだとして、資料の提供を強く求めました。事業者の回答の「出来るだけ保全している」ことの実態は下記の通りで、埋め立て予定地の貴重種は「生埋め」です。「適切な保全措置」は講じられていません。
《事業者の貴重種の保全の実態(概略》・・保全になっていない実態
@新種のホソウミヒルモは熱田漁港東海域が主な生息地なので、そこを保全し、埋立予定地内のホオウミヒルモはやむなく消滅(生埋め)(注:埋立地は第一発見場所である。)
Aニライカナイゴウナ、オサガニヤドリガイは埋立予定地の種を採取し、他の海域に移動する。
(注:移動した種が生息できるかの保証はない。)
Bジャングサマテガイは埋立予定地内にも生息しているが、埋立予定地外にも生息しているので、そこを保全する。予定地内は保全できない。
Cトウカイタママキ、フジイロハマグリは事業者は確認していないので、対応していない。(注:沖縄県のRDBには、泡瀬海域・細砂性海底(浚渫場所付近に)に生息していると記されている。)
Dユンタクシジミ、アワセカニダマシマメアゲマキは事業者が確認していないので対応していない。(注:ユンタクシジミは学会で新種と認定され、生息地は泡瀬海域と明記されている。)
E埋立予定地内のウミウチワ属の1種(新種の可能性がある)について、調査・保全を要請しているが、事業者は対応していない。
F埋立予定内に貴重なサンゴ(リュウキュウキッカサンゴ、スギノキミドリイシ、ハナガサミドリイシ等)があり、その保全を要請しているが、事業者は保全できないとしている(注:沖縄近海ではサンゴが消滅し「移植」などでサンゴの増殖が進められているが、泡瀬では「生埋め」である。)
Gアセス書に記載されていなかった絶滅危惧種(主に貝)は調査し沖縄県に報告してある(アセス書には絶滅危惧種は僅か1種しか記載されていないが、現在泡瀬干潟・海域には、事業者の報告でも、約90種の絶滅危惧種の貝が生息している。)絶滅危惧種は、埋立予定地内は保全できないが、埋立地外は汚濁防止膜で保全する。(注:連絡会では約108種の絶滅危惧種の貝を確認している。これだけ多種の絶滅危惧種が生息する泡瀬干潟・海域は保全すべきであり、工事の中止を要請している。)