(4)ホソウミヒルモは新種、泡瀬(沖縄)のウミヒルモ類は5種(国内は6種)

泡瀬干潟を守る連絡会が2003年6月20日に記者会見で明らかにした「ホソウミヒルモ」(第1発見者:新井章吾氏、発見場所:埋め立て工事現場近く)の発見を契機に、ウミヒルモ類の研究が進みました。

そして、2005年3月30日、港湾空港技術研究所、内閣府沖縄総合事務局は記者会見で、「ホソウミヒルモが新種」であること、「国内に生育するウミヒルモ類は6種(従来は2種)」であることを明らかにしています。<事業者による記者会見資料>
 なお、第一発見者である新井章吾氏からの報告も届いています。

 「ホソウミヒルモの発見」は、ウミヒルモ類の分類を大幅に変更させる「画期的な出来事」でありました。当然、第1発見場所は保全されるべきですが、事業者(沖縄総合事務局)は、発見場所を「生き埋め」にする方針を変えません。事業者の埋立事業の推進、種の保全に対する無神経・無理解に抗議しましょう。

<新井章吾氏からの報告>
◆日本におけるウミヒルモ属の分類に関する新知見
(内村真之*・新井章吾**・宮崎勤***・横山奈央子****・井上徹教*・中村由行*・嶌田智*****,2005) 日本藻類学会第29回大会演旨 藻類53-1, p.98

今年度から沖縄総合事務局那覇港湾・空港整備事務所からの委託を受け,「沖縄県中城湾泡瀬地区の海藻・草類についての研究」が開始された。日本に生育している海産顕花植物は8属16種が記載され,世界で二番目に多様性が高い。しかし、ウミヒルモ属に関しては,Halophila ovalis(ウミヒルモ)およびH. decipiens(ヒメウミヒルモ)の2種しか確認されていない。本研究ではウミヒルモ属の種多様性を明らかにするために,泡瀬地区における毎月の定点観察に加え、比較検討のため石垣島、奄美大島などの南西諸島や本州域でもウミヒルモ属を採集した。その結果,形態によって数タイプに区別することができた。泡瀬地区のウミヒルモ属を既報告の2種だけに分類することが困難であったため,形態と核コードITS領域の塩基配列による分子系統解析も含めて検討した。既報の2種に加えて日本新産のH. minorとH. australisに該当する2種が含まれることがわかった。また,2003年に泡瀬地区で発見されたホソウミヒルモは分子系統解析でも新種である事が示唆されたが、ハワイ原記載のH. hawaiianaと形態が酷使しているので最終分析を行なっている。また、今まで本州でウミヒルモと同定されていたものは,別の新種であることがわかった。したがって日本に生育するウミヒルモ属は,これまでの2種から6種へと大幅に増えることになる。

*港湾空港技術研究所,**海藻研,***海中研,****北大・理・生物,*****北大・先端研セ)