第191回幹事会 泡瀬干潟を守る連絡会 2005年1月18日(火)2005年5月18日

記者会見

泡瀬干潟で注目すべき貴重なサンゴ生息地を発見

〜その保全が急がれる。その活用を考えよう〜

                                                        泡瀬干潟を守る連絡会
共同代表 内間秀太郎 小橋川共男 漆谷克秀

(1)現在工事区域の西側(ホットスポット)は非常に貴重な場所である。

  私たちは、これまで、泡瀬埋立予定地のホットスポット(現在工事区域の西側)は、ホソウミヒルモ・オオウミヒルモ・ウミヒルモ・ヒメウミヒルモ・リュウキュウズタ・ニライカナイゴウナ・オサガニヤドリガイ・スイショウガイ・深場のコアマモ等、新種・貴重種・

重要種の生息場所であり、「場の保全」により「種の保全」を図ることが大事であると事業者に要請してきた。しかし、事業者は要請を聞き入れず埋立工事を続行しようとしている。

ホソウミヒルモの発見後、事業者がウミヒルモ類の新たな知見に基づく分類に尽力したことは高く評価されるが、アセス書で「環境への配慮」が謳われているのに新種の発見場所が保全されないのは、極めて遺憾なことである。

 (2)ホットスポット隣接西側及び西防波堤北西海域に、沖縄ではほとんど見られなくなった貴重なサンゴ生育地を発見ところで、私たちは、以前からこのホットスポットの西側に隣接するサンゴ類生息地(以後「サンゴホットスポット」)及び西防波堤北西海域を調査し、「発信着信 泡瀬はSOS 事業見直しは県民の声」(泡瀬干潟を守る連絡会事務局次長・屋良朝敏、沖縄タイムス05年4月5日)として報告してきた。その後、あらためて現地調査を行った。次はその調査結果とそれに関するコメントである。

(以下18日に公表した記者会見資料、要請文に「オトメミドリイシ」と記載した種はその後骨格標本で同定した結果、「ヒメマツミドリイシ」であることが分かりましたので、変更してあります。)

 ■調査結果

@西防波堤北西海域でヒメマツミドリイシ優占群集(10m枠での被度は最大で50%以上、面積は2500u

以上と思われる)が確認された。

Aサンゴホットスポットでスギノキミドリイシ優占群集(10m枠での被度は最大で50%以上である。面積は400u以上と思われる)が確認された。同群集はカギケノリ、カラクサモク、カサモク等の海藻の群落の中に見られる。

Bサンゴホットスポットでリュウキュウキッカサンゴの群落(10m枠での被度は最大で30%以上、群落の面積は150u程度と思われる)が確認された。同群落は大潮の干潮時には水深数m程度の場所で見られる。付近には同種の破片が分散し、再固着したものと思われる小さな群体が数多く見られた。また、大型群体の中には斃死した群体を生存部分が覆って二次的に肥厚したと思われるものも見られた。

 ■調査結果に対するコメント

@ヒメマツミドリイシ優占群集について(西防波堤北西海域)

同群集は海草群落の中に見られる。ヒメマツミドリイシは近年まで沖縄本島周辺の礁池(イノー)で普通に見られる種であったが、サンゴの白化現象などによって、同種の個体群は縮小し、現在、沖縄本島周辺域で、産卵を行える成長したヒメマツミドリイシ優占群集が数アール規模で見られる場所は、沖縄島南部の大渡海岸など、非常に限られている。次世代のサンゴを周辺海域に供給できる産卵集団が都市近くの泡瀬海域に生存していることは、人間とサンゴ礁生態系の共存を考える上で非常に重要な事例と考えられる。

Aスギノキミドリイシ優占群集について(サンゴホットスポット)

沖縄本島のスギノキミドリイシもヒメマツミドリイシ同様、白化現象やオニヒトデの捕食により、近年まとまった群落が見られる場所が少なくなっている(国頭村沿岸、那覇空港前の儀間の瀬、大渡海岸、摩文仁周辺など)。スギノキミドリイシはサンゴ礁の様々な環境に生息するいわゆる「エダサンゴ」であり、しばしば優占種にもなることから、サンゴ礁生態系の基礎生産や景観構成を担う点で、沖縄本島周辺のサンゴ礁生態系を特徴づける典型性の強い種である。その一方で、減少傾向にあるスギノキミドリイシ優占群集が残存する、場としての特殊性(攪乱を受けても全滅しにくい可能性がある)を考慮することは重要と考えられる。

Bリュウキュウキッカサンゴ群落について(サンゴホットスポット)

様々な環境に生息する種であり、出現自体に特殊性はない。しかし、破片分散で群体数が増加している可能性が高いこと、群体の大きさ(1m以上のものが多い)から1998年、2001年の白化現象の際に斃死しなかったと考えられること、斃死した葉状部を新しい葉状部が覆っていること等から、当該海域のリュウキュウキッカサンゴ個体群が壊滅的な打撃を受けにくい特性(いくつもの離礁が周辺に点在しているため強い波の破壊作用を受けにくい、基盤となっている石灰質岩盤に砂の溜まらない陥没箇所が多く見られ、分散した群体破片が生き残りやすい等)を持っている可能性がある。このような場の特性を生かせば、未固着の破片を周辺の離礁に固定することでサンゴ類の被度増加を促進することができるかもしれない。

 (3)事業者は、上記の海域での調査をほとんど行っていない。

ところで、事業者はこれまで埋立予定地及びその周辺のサンゴについて調査・報告してきたが、埋立予定地はサンゴの被度が小さいとして問題にせず、その後の調査報告もない。平成12年以降は、埋立予定地周辺の海域を調査し、報告している。

そのため、私たちが指摘している海域での貴重なサンゴの生育を見逃している。以下は、環境監視(検討)委員会での報告を連絡会がまとめたものである。

@10m枠での調査では、両海域(注:ホットスポットサンゴ礁とヒメマツミドリイシ群落)はサンゴの被度が0〜10%であり、埋立地以外の被度30%〜40%未満の海域が回避されるので、全体としてサンゴ類への影響の低減が図れる。(平成13年2月28日環境監視検討委員会報告。平成8年8月5日・沖縄県実施調査をもとに作成)

A平成12年以降は、埋立予定地を除いた被度が比較的高い海域(定期的にSt.1〜3の海域あるいは工事中にSt.1〜4、St.1〜5の海域)で調査している。(私たちが指摘しているヒメマツミドリイシ優占群集地については、特段の記述は無く、サンゴ類広域分布調査で被度10〜30%、2.4haとして記述してあるだけである。)

BSt.1は、熱田漁港沖・埋立予定地人工海浜の南西約1`の海域。St.2は、西防波堤中央よりやや西側の南約1キロの海域。St.3は、西防波堤中央よりやや右の北約100mの海域。

C平成16年7月22日、環境監視委員会報告では、「被度の大きな変化はない。種類の減少が変動範囲を超えていたが、工事による濁りの影響ではないと考えられると」報告している。

D報告書では、ヒメマツミドリイシ、スギノキミドリイシの名前の報告は無い(枝状ミドリイシ類の報告がSt.1、St.3に、被度5%未満として報告がある。但し、St.1では平成14年度以降は被度ゼロ。この「枝状ミドリイシ」が「スギノキミドリイシ」を示すかどうかは不明)

Eリュウキュウキッカサンゴ類はSt.2に、平成13年度被度5%未満、平成14年度以降被度ゼロ・生息なし、として報告がある。(「リュウキュウキッカサンゴ類」が「リュウキュウキッカサンゴ」を示しているのかは不明)

 (4)国際サンゴ礁学会シンポジウム【04年沖縄】の宣言はサンゴ礁の保全を訴えている。

  2004年6月28日〜7月2日、沖縄で行われた国際サンゴ礁学会シンポジウム(国、沖縄県も協賛団体に入っている)で採択された宣言(「危機にある世界のサンゴ礁の保全と再生に関する沖縄宣言」は次のように述べている。

 「サンゴ礁とこれに関する生態系は、人類のかけがえのない財産である。これらは、地球でもっとも多様な生物群集と美しい景観を保持し、防波機能及び地域の人々への資源、漁業資源、観光資源を生み出す。しかしながら、サンゴ礁とこれに関する生態系は、過剰な漁業、浚渫や埋立てなどの沿岸開発、陸源物質の流入によって破壊される危機にある。・・・サンゴ礁の劣化は、・・最悪の場合、この人類の貴重な財産の喪失につながる。

 我々は、世界中でサンゴ礁の劣化がすでに危機的な段階に達していると認識している。我々は、これ以上のサンゴ礁の破壊を避け、これ以上のサンゴ礁の死滅を防ぐために今以上の努力が必要であることを強く訴える。・・温室効果ガスを削減することにより、人為的な気候変動を抑制すると同時に、土地利用の変化や汚染による水質の悪化、漁業資源の大量採取などの直接的な脅威も減らすという両方向からの戦略をとらなければならない。この目的を達成するために次の4つの鍵となる戦略を提案する。

1)持続的なサンゴ礁漁業を達成すること、2)サンゴ礁において、効果的な海洋保護区を増やすこと、3)土地利用の変化による影響を改善すること、4)サンゴ礁再生の新たな技術を開発すること。こうした取組は、自然科学者だけでなく、社会科学者、管理者、政策決定者、NGO、市民の参加と連携のもとに進め維持しなければならない。・・我々は、団結して、サンゴ礁に関わるすべての研究者、管理者、利用者、サンゴ礁を愛する全ての人に対し、上述した任務を達成することを訴え、関連する国際機関、各国政府、NGOに対し、この目的達成に向けた共通の理解と手段を見出すことを強く求める。」

  この宣言を、事業者は真摯に受け止めなければならない。事業者(沖縄総合事務局、沖縄県)はこのシンポジウムの共催団体でもある。当然、宣言を実践する義務があると思われる。

 (5)泡瀬のサンゴ生息地は、沖縄市・県の宝、破壊せず観光資源として保全しよう。

 沖縄近海のサンゴ礁もまた危機的な状況にあり、サンゴ礁は年々に激減しつつあることは、周知の事実である。そのような中で、極めて健全な状態で生育している泡瀬海域のサンゴ生息地(泡瀬埋立予定地のサンゴホットスポット、西防波堤北西のサンゴ群落)は極めて貴重であり、「地球でもっとも多様な生物群集と美しい景観を保持し、防波機能及び地域の人々への資源、漁業資源、観光資源」として、また先の「宣言」の趣旨を実践する上で、そのままの状態で保全することが、極めて賢明なことと思われる。世界の流れは、自然環境「ワイズユース」(賢い利用)の時代である。

2002年度から施行されている「沖縄振興特別措置法」は沖縄観光の将来像として「環境保全型自然体験活動(エコツーリズム)」を提唱し、その実施を求めている。泡瀬干潟はまさに、エコツーリズムの拠点として、今後沖縄市・県の観光資源の目玉になるところである。その有効利用を考えるときである。

  私たちは次のことを強く訴えたい。

1)泡瀬海域のサンゴ生息地(泡瀬埋立予定地のサンゴホットスポット、西防波堤北西のサンゴ群落)を早急に調査すること。
2)泡瀬海域のサンゴ生息地の保全について、早急に対策を講じること。
3)都市隣接型のサンゴ類生息地として、アクセス特性を生かした観光資源(荒天時にも利用できる海域生物観察スポット)や教育資源(サンゴ類生息環境等に関する研究サイト)としての活用を考えること。
4)近隣の生息可能海域に次世代のサンゴを供給する資源(マザーポピュレーションとしての遺伝子資源)としての活用を考えること。
5)現在の埋立地からホットスポットとサンゴホットスポットまでの距離は約500〜600mであり、埋立地から水面遊泳によって、容易に貴重な生物群集を観察することができる。現在までの埋立地を縮小あるいは撤去することが望ましいが、今後周囲の生物群集に対する影響が小さいことが分かれば、既存の埋立地をエコツーリズムや研究のためのベースとして活用することを提案する。泡瀬干潟をエコツーリズムの視点からの活用を考えること。

  参考資料として、次の資料1〜6を添付します(PDF)

資料1 西防波提北西海域のヒメマツミドリイシ優占群集地(HM)の位置、スギノキミドリイシ優占群集地・リュウキュウキッカサンゴ生息地(サンゴホットスポット=SHS)の位置

資料2 沖縄タイムス05年4月5日「発信着信 泡瀬はSOS 事業見直しは県民の声」(泡瀬干潟を守る連絡会事務局次長・屋良朝敏)

資料3 サンゴ分布状況(平成13年2月28日・第1回環境監視検討委員会報告、平成8年8月5日・沖縄県実施調査に基づく)

資料4 「環境保全措置」(平成13年2月28日・第1回環境監視検討委員会報告)

資料5 サンゴ類広域分布調査(平成15年6月調査結果)

資料6 平成17年2月25日環境監視委員会報告(最新の報告)その1〜その4

資料6-1

資料6-2

資料6-3

資料6-4