泡瀬の第1期工事計画区域内の深場で複数の貝類貴重種を発見

2004年8月23日


 泡瀬干潟生物多様性研究会・日本自然保護協会(泡瀬干潟自然環境調査委員会)・泡瀬干潟を守る連絡会は,2004年の調査において,泡瀬の第1期工事計画区域内の深場(学術用語では潮下帯=干出しない海から貝類の貴重種(オキナワハナムシロカゲロウヨフバイコウシヒメムシロヤマホトトギスコバコガイ )を発見。同年8月23日報告し,埋立事業に関する意見を述べました。

◆新聞記事'04年8月24日
<沖縄タイムス↓・琉球新報→>


 泡瀬の第1期工事計画区域内の深場から,生物学的(分類学的・生物地理学的)に貴重で 重要と考えられる複数の種が確認された.これらの種は,本年度の海上工事計画区域付近に分布しており, 工事が施行されれば,その影響は免れないものと考えられる.したがって、本年度の工事計画の見直しを求めたい.

 今回調査した深場は,砂泥〜泥の内湾的な環境であり,そうした環境に特異な種が出現していると考えられる.このような内湾的な生物生息環境自体が琉球諸島には稀である.この深場には,特殊で貴重な生態系・生物群集が成立していると指摘される.これは泡瀬の環境と生物多様性の重要な側面である.このように泡瀬は干潟域だけでなく、深場も貴重な環境であることが明らかになりつつある.したがって 干潟域のみに主眼を置いたこれまでの環境保全の論議・施策は再検討されなければならないと指摘される.例えば「消失するのは干潟の二割です」というような事業者の主張は, 泡瀬の環境の全体性を正しく評価しているとは言えない.

 今回確認された諸種は1cm〜数cm程度であり,内閣府沖縄総合事務局の「希少甲殻類・新種貝類等確認 調査(平成15年9月)」では,このサイズの貝類も調査されていたにも係わらず,発見されていない. すなわち,沖縄総合事務局の調査は不充分であり,泡瀬の生物多様性を正確に把握できていないと指摘される.

 多くの貴重種が,市民調査の指摘により泡瀬から新たに確認されている.このことは,環境影響評価書そのものが,非常に杜撰なものであったことを証明している.

  泡瀬の環境と生物多様性の素晴らしさは、既に多くの研究者や人々が認めるところであり、世界的な「島人ぬ宝」と呼んでも全く過言ではない.我々は沖縄県と沖縄市の発展において,この泡瀬の自然の素晴らしさを有効に活用できないであろうか.今ある「島人ぬ宝」に我々が気付かないのであれば、沖縄の未来はど うなるのだろうか?.泡瀬の自然の豊かさを,人間の未来の豊かさに重ねるような政策を期待したい.