移植海草の評価、中間報告
2005年8月 前川盛治(泡瀬干潟を守る連絡会事務局長)
T.はじめに
事業者は、2005年7月21日の中城湾港泡瀬地区環境保全・創造検討委員会海草藻類専門部会でこれまでの海草移植についての評価(案)を審議し、その案が8月1日の環境保全・創造検討委員会で審議・了解されています。この海草藻類専門部会には、私(泡瀬干潟を守る連絡会 事務局長・前川盛治)も1委員として参加し、意見を述べてきました。委員会では、私の意見も大部分取り入れられていますが、意見が合わず取り入れられなかった部分を含め報告し、また批判を加え、「移植海草」の評価の中間報告とします。
U.これまでの経過 海草移植の理解のためにまず時系列に経過をまとめておきます。
1998年(平成10年) 手植え移植実験開始(7月) アセス実施(93年?〜98年)
1999年(平成11年) アセス準備書送付、広告・縦覧(3〜5月)
2000年(平成12年) アセス評価書送付、広告・縦覧(3〜4月)、埋立申請(5月)、埋立許認可(12月19日)
2001年(平成13年) 環境監視・検討委員会設置(2月)、機械移植実験(10月〜02年2月)
2002年(平成14年) 機械移植実験順調と公表、事業着工表明・石材搬入開始(3月)、仮設橋梁工事着工(8月)、手植え移植実行(12月〜03年1月)、減耗対策実験実行(12月〜03年3月)、海上護岸工事着工(12月)
2003年(平成15年) 仮設橋梁工事再開(16年1月)、海上護岸工事は再開せず(新種・貴重種発見とその対策のため)
2004年(平成16年) 海上護岸工事再開(10月)、仮設橋梁工事再開(8月)事業者、海草移植で「場の創造」を提起(6月)
2005年(平成17年) 手植え移植実験地St.U壊滅と報告(1月)、「場の創造」実験を開始(低天端堤の設置、4月)、海草移植評価(7月)、「場の創造」新たな実験提起(盛砂、海草移植→委員会では保留、次回検討)、工事再開予定(8月)
V.手植え移植実験の評価
この実験は、平成10年から泡瀬の浅海域で行われてきた。実験地は、St.T、St.U、St.Vである。この実験については、これまで委員会のたびごとに結果が報告されてきた。その報告の概要は、St.Tは不良、St.Uは良好、St.Vは普通であった。
私たちは、この実験報告は多くの疑問点があるとして、公開質問をし、独自に調査してきました。その結果をもとにして、次の問題点を指摘してきました。
1.僅かの実験の、しかも3地点の内1地点の「良好」という結果で評価することは科学的でない。
2. 実験地は豊かな自然藻場に隣接し、自然藻場が拡大したのか、移植海草が広がったのか判明できない。
3. 実験地は浅海であり、この結果を深場の手植え移植に適用できない。深場での実験が必要であり、結果を見るためには数年は必要である。
4. アメリカのマークフォンセカ博士(米国務省海洋気象局・海草専門家)も「ほんの24uの移植に基づいて25万uの海草藻場の保全を目的とする移植プロジェクトを正当化することは困難である」と証言しています。
しかし、事業者は、St.Uは良好との報告をもとに、深場での手植え移植は「適応可能性が高い」と独自に判断して、02年度の海上工事と並行して、02年12月〜03年1月に手植え移植が事業として行われました。
ところが、良好とされたSt.Uは05年の海草藻類専門部会で、「壊滅的な状況になっている」と報告されています。事業者の判断の根拠が根底から崩れたことになる。事業者は、これまで験の成果を委員会に度々に報告してきたが、05年6月から審議している「海草移植の評価」から、手植え移植実験の報告は無くなっています。
手植え移植実験の結果を現時点で評価すると「手植えでの移植は困難である」と判断できます。
写真1(事業者評価の高い時期のSt.U) 2002年11月撮影 自然藻場から広がったのか、移植海草から広がったのか判別がつかない。(周辺は写真と同じような自然藻場) |
写真2(2005年8月8日) 北側(4u)の4分の1(北東1u) 左の写真と同じ場所。波紋のある砂地に戻る。海草は壊滅状態 |
W.手植え移植の評価
事業者は、2005年8月1日の中城湾港泡瀬地区環境保全・創造検討委員会海草藻類専門部会
でこれまでの海草移植(機械移植実験、減耗対策実験、手植え移植)についての評価を行ってい
ます。
(1)手植え移植の評価
05年6月13日、7月21日の海草藻類専門部会の審議を経て8月1日環境保全・創造検討委員会に報告された手植え移植の評価を記します。「3.手植え移植藻場の総合評価 環境影響評価書によれば、移植先の海草・藻場の監視基準は《移植時と比較して海草の生育被度が高くなっており、藻場に多くの生物が出現していること》となっている。一方、手植え移植藻場の評価指標である被度、面積、生物生息状況を総括すると、以下の通りである。被度:平均で移植後2年間で30%から10%に減少し、その後増加するまでにはいたっていない。(以下省略) 面積:全体で移植後2年間で約2倍に増加している。(以下省略) 生物生息状況:(省略) 【評価結果】短期的に見れば、被度においては一旦減少した後増加するまでにはいたっていないが自然藻場の変動の範囲内であること、藻場の面積、生物生息状況においては概ね良好な結果が得られており、移植海草の再生産は図られ、生物生息環境も進展していると判断されることから、藻場生態系が維持されている。長期的にみれば、大型海草群落は遷移の途中と見られ、今後もモニタリングを継続していくことが重要である。」
この評価には私の意見も取り入れられていますが、「面積が2倍になっている」こと等については疑問があり、委員会でもそれを指摘しています。以下いくつかの問題点として指摘しておきます。
問題点1
事業者はアセス書で、移植先の海草・藻場の「事後調査監視基準」を設定していますが、それは次のようになっています。
「移植時と比較して海草の生育被度が高くなっており、藻場に多くの生物が出現していること」
この監視基準からすれば、移植地の被度は3分の1程度に減少していますから、基準をクリアしていません。このことから評価すれば「手植え移植は成功していない」と判断すべきです。
問題点2
事業者は面積の初期値を移植後2週間後の2月中旬の調査値を使っていますが、その頃は移植後劣化し面積が減少した頃ですから、移植後と現在を比較する数値として使うことは疑問です。
初期値は移植直後の面積を使うべきではないでしょうか。
A移植直後の面積(合計) |
B事業者の初期値(合計) |
C現在の面積 (事業者3月調査) |
A/C |
B/C |
115u |
95u |
約195u |
約2倍 |
約1.7倍 |
注意:移植直後の面積は私が計算した値。
移植株の総面積は115u(容器1,315個分、25cm×35 cm×1,315個=115)
このデータで判断すると、移植海草面積の増加は約1.7倍です。
問題点3
事業者が使っている面積の数値は二つあります。一つはモニタリング区域をスケッチしそれから面積を計算した数値(数値A)と目視で大まかに記録した数値(数値B)です。事業者が藻場全体の面積に使っている数値は、数値Bです。数値Aと数値Bでは大きな開きがあります。
モニタリング区画2Iと10Hで、事業者公表のデータでそれを比較してみます。
数値B 各調査点の生育状況(03年2月〜9月のデータ)での面積(u)
2月 |
3月 |
4月 |
5月 |
6月 |
7月 |
8月 |
9月 |
|
2-I |
1.4 |
1.2 |
1.2 |
1.2 |
1.4 |
1.4 |
1.4 |
0.8 |
10-H |
1.8 |
1.8 |
2.0 |
2.4 |
2.4 |
2.4 |
1.8 |
1.4 |
合計 |
3.2 |
3 |
3.2 |
3.6 |
3.8 |
3.8 |
3.2 |
2.2 |
数値A 2m×2mコードラード内における移植海草類の面積単位:u
|
2月 |
3月 |
4月 |
5月 |
6月 |
7月 |
8月 |
9月 |
2-I |
0.6 |
0.57 |
0.49 |
0.44 |
0.74 |
0.86 |
0.75 |
0.76 |
10-H |
0.83 |
0.74 |
0.67 |
0.70 |
1.43 |
2.30 |
1.36 |
1.24 |
合計 |
1.51 |
1.31 |
1.16 |
1.14 |
2.17 |
3.16 |
2.11 |
2 |
例えば5月で比較すると、数値Bの合計(3.6)と数値Aの合計(1.14)は約3.2倍の開きがあります。事業者が面積の変化を示している数値(グラフ)は数値Bであり、スケッチによる正確なデータ数値Aとは大きな開き(時には約3倍)があり、そのような観点から面積増加の数値(グラフ)を見るべきです。これについては、海草藻類専門部会での私の指摘後、数値Aと数値Bはそのようなデータであることを明示すること、そのように見るべき数値であることが確認されています。
すなわち、移植海草面積が約2倍に増えているということは、科学的・定量的に正確な数値ではないのです。
問題点4
面積は小型海草(ウミヒルモ、ウミジグサなど)を含んでおり、小型海草の面積の割合が大きいのです。
移植海草は被度50%以上の大型海草藻場(スガモ、アマモなど)を移植していますから、正確には大型海草の面積、小型海草の面積を区別して評価すべきです。残念ながら事業者はその様な調査はしていませんが、私の指摘後モニタリング区画2Iと10Hで大型海草、小型海草の面積を区別して示すようになりました。
また、移植直後と現在の被度調査で、小型海草と大型海草の被度比率の変化を事業者はデータで示していますが、大型海草の被度が減少し、小型海草の被度が増加している状況から判断すると、移植藻場が移植元の状況にはいたっていないことは明白です。
これらのことから、海草藻場の単純な面積変化だけで、藻場生態系の保全を判断することは科学的ではありません。(なお、この被度比率のデータで現在の被度は10%であるのに、全体の各海草の被度を合計すると15%になっていることは、被度の調査も大雑把な調査であることが分かります。)
問題点5
さらにおかしなことは、事業者が実施している泡瀬海域での「広域藻場分布調査」では、泡瀬海域で自然海草藻場は劣化し、被度も減少し(被度50%以上の大型海草藻場、平成13年度56.8ha→平成17年度1.8ha、5年間で約55haの被度50%の藻場の消失)、面積も減少(平成14年度274ha→平成17年236ha、3年間で約38haの藻場が消失)しているのに、手植え移植地では、被度は減少しているものの、「面積は2倍に増加している」ことです。ほんとうに不思議なことです。北部の嘉陽海域でも、金武湾の平安座海域でも、泡瀬の対照区でも、泡瀬全体でも藻場面積が減少しているのに、手植え移植地では2倍に増えている? この疑問に事業者は「大きい区域での調査と、小さい区域での調査の違い」「手植え移植地は、自然藻場で劣化しているところの藻場の状況まではいたっていないが面積は増えている」と説明しています。私には理解できませんが、皆さんはどうでしょうか。この疑問は、8月1日の委員会で数名の委員からも指摘されていました。調査方法が科学的(現実を客観的に評価しているのか? 移植地を甘く評価していないか?)なのか、数値が信用できるのか、疑問が広がるばかりです。事業者の説明責任が問われます。
手植え移植は、現時点で「成功している」とは判断できません。あと数年のモニタリングが必要です。下の図は、事業者が示した、2Iと10Hの変化を示すスケッチ図です。
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平成15年1〜2月 |
平成16年5月 |
平成17年3月 |
2I 被度区分 |
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10H |
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次の写真は、モニタリング区域2Iと10H(いずれも4u)の4分の1(1u)の写真です。
平成13年12月30日 H10の一部、大型海草もみえるが被度は低い。 上のスケッチ図の4等分の右上の写真 |
平成13年12月30日 2Iの一部、被度が数%で小型海草しか生えていないところも「海草藻場」として計算される。上のスケッチ図の4等分の右上部分 |
X.広域機械移植の評価
機械移植の評価(要約)は次の通りです。
「(1)短期的な変化から得られた知見 移植適地:浅海への移植は避ける必要がある。移植技術:台風時の減耗抑制が必要である。 (2)長期的な変化から得られた知見 移植適地、移植技術:深所に移植したものは、今後も生育が見込まれる。その他:長期的な視点で観察することが重要である。
実験の目的である広域的な移植の適応性について、以上の知見が得られたことから、本実験の目的は達せられた。」
唖然とした評価です。「浅場では駄目でした、深場では可能性があります、減耗対策が必要です、長期的に見る必要があります」という結論を得るために、約1haの移植海草(6290個の移植ブロック×1.5u=9435ha)のほとんどを枯死・壊滅させて、実験の目的は達せられたとは驚きです。6290個のほとんどの移植ブロックが評価A(良好)から評価D(不良)になったことを以前の委員会に報告したので、機械移植の海草がどうなったのかの評価は終わったということか?枯死・消滅した移植海草の責任は誰が取るのかと言いたい。
実験のデータの分析にも問題があります。これは、海草藻類専門部会でも指摘したことですが、ここでも報告しておきます。
「事業者は、広域機械移植の評価のモニタリング地点としてSt.a〜lまでの12地点を選び調査報告していた。しかし2002年(平成14)10月から、調査地点、m、n、o、p、qを増やし調査報告している。この事への疑問と意見。
1. St.a〜lの評価は以前の評価(4段階)でほとんどが、「不良・評価D・色で赤」と報告していた。この調査地点は、事業者が機械移植直後、多くの場所に移植したところから無差別平等に選び出した12の地点(浅海9地点、深場3地点)であり、浅海に多くの移植ブロックを置いたことからすれば、科学的であったと思われる。(移植ブロック1.5uは6290個。単純面積1.5×6290=9435u、12×100=1200u、1200÷9435×100=13%の選出)
2. 機械移植の結果が思わしくないので、平成14年度10月調査から調査地点を5つ増やした。これは、台風後生き残ったところから比較的良い場所を選んだ、意図的なものであった。壊滅的な場所(移植ブロクが消滅・枯死した場所)は、無数にあったのに、良好な5地点を追加したのは、公平さを欠き非科学的である。
3. その後の報告では、St.n、St.pを特別にとりあげ、機械移植も成功しているかのように報告している。
「広域移植実験 追跡調査による海草の変化は以下の通りでる。
@ 移植海草の生育被度はこれまで横這いまたは低下の傾向にあったが、St.nで は平成16年1月から7月にかけて、St.pでは平成16年9月から10月にかけて増加が見られた。 |
(平成17年3月17日、第3回海草藻類専門部会 参考資料―4 1−13ページ)
以上まとめてとしての意見St.m、n、o、p、qは他の調査地点St.a〜lとは違い、後で意図的に追加された調査地点であり、参考的に見るべきである。そこを特別に評価することは科学的ではない。」
以上の私の意見は、手植え移植での評価で「機械移植の深場での成功例から追加調査地点を除くべきである」ということで論議し、私の提案は受け入れられています。
しかし、今回の機械移植の評価で「深場では生育が見込まれる」ということを示すのに、追加の5調査地点のデータが使われています。ここでは、私の意見は反映されていません。
「移植1年目の台風シーズンを経ていったん面積、被度が減少しても、2年目以降は面積拡大や被度の向上がみられている地点、長期的には生育の見込みがある、深所5地点、l、m、n、p、q 被度面積が向上している地点の割合(深場) 5/8=63%」
この記述・データは上に述べた理由から、m、n、p、qは除くべきですから、「被度面積が向上している地点の割合(深場) 1/3=33.3%」に修正すべきです。
広域機械移植実験は、あまりにも杜撰な、無謀な、海草藻場の保全とは名ばかりの実験であり、海草移植としては失敗であった、というのが結論になります。
広域機械移植地St.l(深場)02年台風16号後 台風後、壊滅的な移植ブロック(その後消滅) 浅場・深場の移植ブロックの6290個はほとんどが、この例のように枯死・消滅した。 |
広域機械移植地St.l(深場)02年台風16号後 台風後も生き残った移植ブロックの例 このような例は多くない。 |
Y.減耗対策実験の評価
8月1日の委員会での評価(要約)は次の通りです。「得られた成果 短期的な変化から得られた知見 @掘削して移植することは、砂の移動や流失を抑制し、台風時の減耗を低減する効果をもつ。A掘削しない場合にも、密植した箇所では生育が維持されたことから、機械化移植海草の生育には密植が効果的である可能性が考えられる。実験の目的である減耗対策工法別の効果検証について、以上の知見が得られたことから、本実験の目的は達せられたと考えられる。」
広域機械化移植と同様、移植された96個×1.5u×3工法=432uの評価はどうなるのか?掘削・密植が有効と分かったので、432uの移植海草はどうでもいいのか?3工法の移植直後と現在の事業者作成のスケッチ図をご覧下さい。3工法とも移植海草はほとんど残っていません。ほとんど無くなった状況の中で、工法の違いとの関連で評価することが本当に意義があるのか?疑問です。
下の図は事業者が示した、減耗工法のスケッチ図です。このスケッチ図の最近の図は昨年の11月が使われています。台風前後の変化を見る、ということでそうなったと思いますが、直近(05年5月)のデータも見せるべきです。
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移植直後(03年2月) |
最近(04年11月調査) |
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工法1(密植して砂を埋める) |
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被度区分 |
左下から1番・・左上は24番 23番がモニタリング区域 |
ほぼ3分の2が失われた。北側に移植ブロックが残っていることで、密植の効果を言っています。 |
工法2(周辺を土嚢で囲む) |
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工法1と同じ移植ブロック数ですが、ほとんど壊滅です。 |
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工法3(掘削してから移植ブロックを置き、砂を埋める) |
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被度は大きく減少しましたが、小型海草を含め、台風前後の変化があまり無いので、減耗対策の効果を言っています。 |
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減耗工法T 03年12月30日 南側の比較的残った場所、23番の一部 |
減耗工法T 03年12月30日 北側の壊滅した場所、4番の一部 |
減耗対策実験は海草の移植としては、失敗です。
Z.海草移植の総合評価、今後の課題
海草移植(広域機械移植実験、減耗対策実験、手植え移植)について、海草藻類専門部会の野呂忠秀座長(鹿児島大学水産学部教授)は、記者会見で次のように発言しています(要旨、文責前川)。
「海草藻類専門家は、移植だけで海草藻場が保全できるとは思っていない。場の創造・海草が生育できる条件の場をつくることと合わせて行うことが必要である。」
そして現在、事業者は「場の創造」を提起し、新たな実験を提唱していますが、具体的には今後の課題ですから、実際に海草移植に適応できるかどうかを含めて現時点で予断を許しません。結果が判明するのは数年先です。結果が分かるまでは「工事を中断する」ことが最低必要ではないでしょうか。
私たちは、これまで、「移植で海草藻場は保全できない。埋立の条件である海草移植の技術が現時点で確立されていないことから、埋立工事は行うべきではない。現在すすめている工事は直ちに中止すべきである。」と主張してきました。事業者は「被度50%以上の海草藻場は工事区域内にないので、今年度の海上工事は海草移植なしですすめる」と言っていますが、これはアセスの趣旨(埋立の代償措置として、埋立地内の被度50%以上の海草藻場は移植で保全する)に反します。被度50%以上の海草藻場を機械移植実験等の行為で破壊し、その海草移植実験や手植え移植も成功していない(モニタリング中)のに、工事の前提が崩れているのに、「工事だけは進める」態度は、環境保全・環境への配慮を欠くものと言わざるを得ません。
また、先に述べたように事業者が実施している泡瀬海域での「広域藻場分布調査」では、泡瀬海域で自然海草藻場は劣化し、被度も減少し、面積も減少していると報告しています。移植に使われた被度50%以上の海草藻場は1ha程度であるのに、約24haの被度50%の藻場が消失していることは大きな問題です。事業者は、現時点で原因は特定できないが、海水温の上昇が原因ではないかと推論しています。移植・工事の影響はないのか、原因の究明が必要です。
原因が判明するまで、また藻場の保全のためどのような対策が必要なのかを確立し実施するまで、工事を中断すべきです。「移植すべき海草藻場は無くなったので、海草藻場の移植なしで全ての工事を行う」事にならないように、24haの海草藻場が保全される対策が必要です。